研究課題/領域番号 |
23590673
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
常岡 英弘 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40437629)
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研究分担者 |
市原 清志 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10144495)
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キーワード | Bartonella henselae / CSD / ELISA法 |
研究概要 |
本研究の目的は猫ひっかき病(CSD)の病原菌で培養困難なBartonella henselae に対する血清IgG抗体価を高感度に測定できるELISA 法の確立である。 我々はすでにB. henselae菌体のN-ラウロイル-サルコシン(サルコシン)処理後の溶解蛋白成分が優れていることを見出している。研究初年度ではB. henselae49882株をサルコシン処理した溶解液中のB. henselae特異抗原蛋白の検索を精製せず直接試みた。その結果、11~15KDa,32~35 KDa,45 KDa,67 KDa、78 KDaなど、CSD患者血清と反応する多くの共通蛋白成分が含まれていることが判明した。またこれら蛋白は一部Peptidyl-prolyl cis-trans-isomeraseや50S ribosomal protein L7/L12などと同定された。しかしサルコシン溶解液には健常人血清と反応する蛋白も未だ多く含まれているため、本研究2年目では特異蛋白同定の効率化のために、同定前にこの溶解液をイオン交換カラムクロマトグラフィ(DEAE)で精製することを試みた。 【方法】DEAEにサルコシン処理B. henselae溶解液をチャージ後、0~1000mMNaCl加トリス塩酸緩衝液(pH8.3)を流し、それぞれを採取した。 【結果・考察】NaCL70~150mM緩衝液中に健常人血清(5例)と,170~ 280mMではCSD患者(5例)と主に反応する蛋白成分の溶出がそれぞれ認められ、また他の溶出液はELISA法に関与しない蛋白であることが判明した。これらの成績よりB. henselae特異抗原蛋白の検索には170~280nm溶出液を用いて蛋白同定を進めることが有用であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
サルコシン処理抽出液に含まれる健常人と反応する蛋白(不純物質)が少ないほど同定が容易であることが判明し、その精製法に時間を要した。また質量分析装置がトラブル続きで長期間使用不可であったため、蛋白の同定実験が大きく遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
イオン交換カラムクロマトグラフィ―(DEAE)で精製したB. henselae菌体サルコシン液中の蛋白抗原の同定を急ぎたい。またそれら蛋白のリコミナント蛋白を精製して、ELISA法の抗原作成に努力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗原精製に手間取ったことや質量分析装置のトラブルにより実験ができなかったため、予定していた試薬購入ができなかったことより予算未使用額が生じた。その額も含めて、次年度は抗原蛋白の同定と蛋白抗原作成のための消耗品(各種培地、各種シリンジ、緩衝液、抗血清、ピペット、チップなど)、人件費(データ整理、実験アシストなど)、研究成果発表のための学会費等に使用する予定である。
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