研究課題/領域番号 |
23590677
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
森本 徳仁 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (60398055)
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研究分担者 |
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90346560)
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キーワード | Helicobacter pylori / 特発性血小板減少性紫斑病 / H. pylori菌体膜蛋白 / 抗原抗体複合体 / 血小板 |
研究概要 |
Helicobacter pylori (以下H. pylori)感染により引き起こされる特発性血小板減少性紫斑病(cITP)のメカニズムとして”H. pylori菌体膜蛋白が血小板に結合しさらに抗H.pylori膜蛋白抗体が結合した免疫複合体形成が関与する”という仮説のもと検討を行っている。 これまでにH. pylori関連cITP発症に関わるH. pylori菌体膜蛋白がヒト血小板に結合する事を実証している。現在、生体内で本現象が起こるかについて実験動物を用いて継続的に検討を行っている。スナネズミにH. pyloriを感染させたのち、胃内のH. pyloriの定着の有無を確認後、採取した血小板にH. pylori菌体膜蛋白が結合しているか否かを確認している。さらに、我々の仮説から、マクロファージに貪食された免疫複合体(抗H. pylori菌体膜蛋白抗体-H. pylori菌体膜蛋白-血小板)が脾臓内に存在する可能性もあることから、脾臓内のH. pylori菌体膜蛋白の検出も試みている。また、同様に感染動物血清中の抗H. pylori菌体膜蛋白抗体の検出も行っている。これらの抗原および抗体の検出には主にウエスタンブロット法および免疫沈降法等の免疫学的手法により検出する。 上記の検討により、生体内でH. pylori菌体膜蛋白が検出されれば、これまでの仮説とする免疫複合体(抗H. pylori菌体膜蛋白抗体-H. pylori菌体膜蛋白-血小板)が、ヒトにおけるH. pylori関連cITPの発症および主病態(血小板数減少あるいは破壊)に関わる重要な因子として検査診断に応用できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、これまでに申請者らが同定したH. pylori菌体膜蛋白を用いてin vitroおよびin vivoでの解析を行うことにより、免疫複合体説(抗H. pylori菌体膜蛋白抗体-H. pylori菌体膜蛋白-血小板)に基づいたH. pylori関連cITP発症のメカニズムを明らかにするものである。 ・in vitro解析: これまでにH. pylori菌体膜蛋白遺伝子の遺伝子変異株を作成して得られたリコンビナント蛋白を用いて患者血清との反応性をウエスタンブロットで確認し機能解析を行い、H. pylori関連cITP患者において本蛋白に対する抗体を有する事を確認している。また、臨床分離株におけるH. pylori菌体膜蛋白遺伝子の保有率を調査した結果、ほとんどの国内株で本遺伝子を有している事を確認した。 ・in vivo解析:生体内でH. pylori関連cITPを再現するために、H. pyloriを実験動物に感染させ血小板および脾臓内でのH. pylori菌体膜蛋白の検出を試みている。現在、H. pylori感染マウスから血小板および脾臓等の材料を採取し、これらの材料からのH. pylori菌体膜蛋白の検出を試みている。H. pylori感染からcITP発症に至る、より現実的な臨床経過観察と解析を行うことにより、H. pylori関連cITP発症のメカニズムを明らかにしたいと考えており、これまでの達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
・実験動物を用いたH. pylori菌体膜蛋白に対する生体反応の解析 H. pyloriを実験動物に接種し、動物生体内での抗H. pylori菌体膜蛋白抗体の産生および血小板とH. pylori菌体膜蛋白の結合の証明を行う事により、cITPの主病態(血小板数減少あるいは破壊)を検証する。申請者らの仮説(抗原抗体複合体説)を生体内で再現させ、H. pylori感染からcITP発症に至るより現実的な臨床経過・経緯の観察と解析を行う。上記の研究を行うにあたり、血小板数や抗H. pylori菌体膜蛋白抗体の経時的変化を観察するとともに、血液中(血小板)あるいは組織中のH. pylori菌体膜蛋白の検出を試みる。これらの解析では、イムノブロットをはじめとする免疫化学的手法を用いる。 ・ヒト血小板凝集能を有するH. pylori菌体膜蛋白の解析 申請者らはH. pyloriがヒト血小板を凝集させる事を報告しており、今回同定されたH. pylori菌体膜蛋白も同様に血小板凝集能を有する事を確認している。そこで、血小板のH. pylori菌体膜蛋白の結合部位の同定や凝集にいたる経路の解析等を行う。H. pylori菌体膜蛋白による血小板凝集がH. pylori関連cITP発症に関与していれば、血小板との結合部位に作用する薬剤の投与によりH. pylori関連cITPの治療あるいは症状の軽減に繋がるもと思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
・実験動物を用いたH. pylori菌体膜蛋白に対する生体反応の解析を行うにあたっての実験動物および生体内のH. pylori菌体膜蛋白検出に使用する(免疫学的実験法に関する)試薬等の購入。 ・血小板凝集能解析に係る試薬等の購入。 ・抗原等の蛋白分離精製に使用する電気泳動装置一式およびブロッティング装置の購入。 ・チュープやピペット等の実験器具の購入。 ・研究成果発表のための旅費および論文投稿のための費用。
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