ポンペ病(Ⅱ型糖原病)は、リソソームに存在する酸性α-グルコシダーゼ(AαGlu)の遺伝的欠損に起因する遺伝性代謝異常症である。平成19年、本症に対する根治療法として酵素補充療法が承認されたことから、血液試料による簡便で信頼性の高い早期診断法の開発が求められている。申請者は、これまで血液濾紙による新生児マススクリーニング法の開発を行う中で、日本人健常新生児の約4%がアジア人固有の遺伝子多型(c.1726G>A; C.2065G>A)のホモ接合体(AAホモ接合体)であり、その一部が患者群の活性値と重なることを報告した。また、血液濾紙を用いて酵素診断する際に反応系に共存するヘモグロビンの影響を受けないBa/Zn法を確立し、ポンペ病患者とAAホモ接合体の分離を顕著に改善した。これらの技術を組み合わせて、日本人(アジア人)のためのポンペ病の新生児スクリーニングシステムを構築し、平成25年4月より熊本県(一部福岡県含む)を対象に、本症の新生児スクリーニングを開始した。現在までに約6万例の新生児を調べ9例のポンペ病を同定した。従来からポンペ病の発症頻度は4万~10万人に一人と考えられていたが、本研究のより、少なくとも従来から考えられていた患者数よりも10倍以上の患者が存在していることが明らかとなった。現在、その病因遺伝子変異の解析を行っている。さらに、培養線維芽細胞による確定診断の結果、その殆どは遅発型ポンペ病であったことから、原因不明の神経・筋疾患(成人)の中に、多くのポンペ病が潜在していることが強く示唆された。そこで、明らかに神経・筋疾患の症状を持つ患者で確定診断がされていない症例からポンペ病を掘り起こすため、病理組織用に作製されたスライドグラス上の筋組織凍結切片を用いた酵素診断法を確立した。現在、その方法を用いてハイリスクスクリーングを実施している。
|