研究課題/領域番号 |
23590681
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
栗林 景晶 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50381257)
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研究分担者 |
渡邉 直樹 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10158644)
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キーワード | 再生不良性貧血 / 自己抗体 / 骨髄不全症候群 / 血清マーカー |
研究概要 |
再生不良性貧血(Aplastic anemia;AA)は、汎血球減少症を呈する症候群である。AAでは、クローナルなT細胞が存在し治療に伴い消失することや、血中IFNγ濃度が上昇していることなどが報告されている。また、AAの治療に用いられるステロイド、シクロスポリンや抗胸腺細胞グロブリンはT細胞を標的としており、細胞性免疫が病態形成に重要な役割を果たすと考えられている。一方、AAの免疫異常が、どの細胞の、どの分子を標的としているかは未だ不明である。今回我々は、AA患者血清中の自己抗体認識分子をSEREX法で同定した。 AA患者血清中の自己抗体の発現を、血球細胞株K562と骨髄ストローマ細胞株hTS-5を用いFACS解析で調べた結果、43.5%(10/23)がK562細胞と、21.7%(5/23)がhTS-5細胞と反応した。そこで、K562からcDNAライブラリーを作製し、AA患者血清と特異的に反応する抗原遺伝子をSEREX法で探索した結果、CLIC1、 SLIRP、 HSPB11、 NHP2L1、 SLC50A1、 RPL41、 RPS27と SNRPFの8分子が同定された。 そこで、AA患者血清中のSEREX抗原に対する自己抗体の発現を、ELISA法で解析した。IgG型自己抗体の陽性率は、CLIC1、HSPB11、RPS27で、それぞれ32.1%(9/28)、39.3%(11/28)および50.0%(14/28)であった。NHP2L1、RAG1AP1、RPL41、SNRPFとSRA-RNABPについては、自己抗体価の上昇は認めなかった。 今回同定されたSEREX抗原は、K562細胞およびCD34陽性骨髄単核球細胞で強く発現していた。また、AA患者の自己抗体がhTS-5ストローマ細胞よりもK562血球細胞を標的としていたことから、AAにおける免疫異常の標的は血球細胞と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度までに採取したデータで、論文化が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 本研究の結果同定された自己抗体の臨床的意義を、検討する。 抗CLIC1抗体、抗HSPB11抗体と抗RPS27抗体の発現率を再生不良性貧血と骨髄不全症候群患者で調べ、両者の識別における有用性を評価する。 2. 自己抗体が認識する抗原が、血清マーカーとなり得るかどうか調べる。 再生不良性貧血患者血清中を用い、CLIC1、HSPB11やRPS27抗原が検出できるか調べ、血清マーカーとしての応用を図る。 以上の結果を基に、今回同定した自己抗体または自己抗原が、再生不良性貧血の血清マーカーとなり得るのか、結論づける。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究を推進するため、抗原作製用の遺伝子関連試薬や、ELISA用の蛋白関連試薬の購入に用いる予定である。 一部、若干研究の遅れにより、75,869円を次年度へ繰り越した。当該研究は平成25年度に行うので、繰越金はそれに使用予定である。
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