再生不良性貧血(Aplastic anemia;AA)は、汎血球減少症を呈する症候群である。今回我々は、AA患者血清中の自己抗体認識分子を、SEREX法で同定することにより、AAで特異的に発現する自己抗体を検出し、その意義を検討した。 AA患者血清中の自己抗体の発現を、血球細胞株K562と骨髄ストローマ細胞株hTS-5を用いFACS解析したところ、43.5%(10/23)がK562細胞と反応し、21.7%(5/23)がhTS-5細胞と反応した。そこで、K562からcDNAライブラリーを作製し、AA患者血清と特異的に反応する抗原遺伝子をSEREX法により探索した結果、CLIC1、 SLIRP、 HSPB11、 NHP2L1、 SLC50A1、 RPL41、 RPS27と SNRPFが同定された。AA患者血清中のSEREX抗原に対する自己抗体の発現をELISA法で調べた。IgG型自己抗体の陽性率は、CLIC1、HSPB11、RPS27で、それぞれ32.1%(9/28)、39.3%(11/28)および50.0%(14/28)であった。 次に、IgG型自己抗体価と免疫抑制療法に対する反応性との関係を調べた。免疫抑制療法不応例よりも反応例で、CLIC1またはRPS27に対するIgG型自己抗体価は高値を示した。また、CLIC1、HSPB11あるいはRPS27に対するIgG型自己抗体価が高いほど、免疫抑制療法に対する奏功率が高かった。 今回同定されたSEREX抗原の多くがK562細胞およびCD34陽性骨髄単核球細胞で強く発現していこと、また、AA患者の自己抗体がhTS-5ストローマ細胞よりもK562血球細胞を標的としていたことから、AAの免疫異常は血球細胞を標的としているものと考えられた。
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