研究課題
本研究全体の目的は、中枢神経系におけるADMA化タンパク質の産生から遊離型ADMAの産生に至る代謝経路の実体とメカニズムを明らかにし、最終的には老化に伴う脳疾患の関連因子を見つけ出すことである。まず、平成23・24年度には、以下の結果を得た。(1)ラット中枢神経系におけるADMA代謝関連酵素(PRMT1およびDDAH1)の発現細胞を同定し、NO産生細胞との組織学的連関性について解析した。両酵素は脳の神経細胞に広く発現し、特に大脳皮質や視床下部においてはnNOSと高い割合で共存した。以上の結果は、中枢神経系でのPRMTとDDAHの共存を初めて明らかにし、nNOSとの形態学的連関性からADMAの代謝系がnNOS調節に重要であることを裏づけるものである。(2)全脳組織抽出液中に新規なADMA化タンパク質を見いだし、フルクトース ビスフォスフェイト アルドラーゼCおよび40Sリボソームタンパク質サブユニット2 (RPS2)と同定した。これらタンパク質は、それぞれ解糖系の主要酵素として、あるいはタンパク質翻訳の場にとって必須のタンパク質として知られているが、最近では多機能性タンパク質として注目され、そのアルギニンメチル化が脳機能と何らかの関係のあることが示唆された。最終年度においては、前年度までの結果を受けて、(3)RPS2のアルギニンメチル化の機能解析に焦点をあて、実験を行った。RPS2の分子生物学的研究を進めるにあたり、リボソームPRMTとして知られているPRMT3のモノクローナル抗体を作製し、IgG1 およびIgG2aに属する2種の抗体を得た。これらの抗体の性質を解析した結果、今後の研究【平成26年度基盤研究(C)採択課題】の有効なプローブになることが実証された。最後に、(4)マウス大脳皮質のADMA代謝系におよぼす加齢と高脂肪食の影響について検討し、長期に高脂肪食を摂取することによりPRMT3の発現量が減少することを認めた。
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