研究課題/領域番号 |
23590687
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (40375069)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エピジェネティック / バイオマーカー |
研究概要 |
PU.1発現と5-azadc効果関連分子機構の解明:まず、5-azadcの各種PU.1トランスジェニック細胞株における特異的な効果が、実際本薬剤投与下で認められる血中濃度で認められるか、検討を行った。その結果、極低用量(0.1microM)においても、PU.1過剰発現細胞は高感受性を示し、PU.1発現低下細胞は耐性を示すことが明らかになった。さらに、PU.1過剰発現K562細胞では、5-azadcにより、高率に赤芽球分化とそれに伴うアポトーシスが引き起こされていることを見出した(BBRC in press)。PU.1発現低下に伴う標的遺伝子群発現上昇意義の検討: PU.1下流標的遺伝子として独自に同定した、メタロチオネイン(MT)-1、ビメンチン(VIM)が、実際の骨髄球系細胞分化においても、PU.1との負の相関が有るか、NB4細胞のレチノイン酸(RA)分化の系を用いて検討した。その結果、RA誘導によりPU.1の発現が増加すると共にMT-1、VIMの発現が減少し、また、PU.1が結合するこれら遺伝子プロモーター上のメチル化割合が増加することが判明した。すなわち、実際の骨髄球系細胞分化でも、PU.1がこれら遺伝子プロモーターをエピジェネティックに制御することにより発現を抑制していることが示された。次に、MT-1機能解析のために、MT-1過剰発現NB4細胞株を樹立した。解析を行った結果、RA誘導による好中球分化を示すG1期増加が、MT-1過剰発現細胞において抑制され、RA添加による分化マーカーの変化(CD11cの上昇、c-myc・myeloperoxidaseの低下等)がMT-1過剰発現細胞において阻害されていた。このように、各種造血器腫瘍病態に関わるPU.1発現低下による細胞分化異常(分化抑制)には、下流標的遺伝子MT-1の発現上昇が関与していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PU.1発現改変K562細胞におけるDNAメチル化阻害剤の特異的な効果が、PU.1の赤芽球分化制御によるものであることを見出した。PU.1による5-azadc薬効制御機構を見出したことは重要である。また、5-azadcは骨髄異形成症候群の治療薬として用いられ始めているが、その薬効の期待は貧血の改善である。すなわち、このように実際に用いられる疾患においてもPU.1及びその標的遺伝子の発現が、薬効制御に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。さらに今年度は、その研究成果を英文誌に報告することが出来た。また、独自に同定したPU.1 標的遺伝子であるMT-1の骨髄球系細胞分化における役割をも明らかにすることが出来た。MT-1過剰発現NB4細胞は、レチノイン酸による好中球分化が阻害されていることが判明し、PU.1が抑制性にMT-1の遺伝子発現を制御することが、正常な好中球分化に必要であることが判明した。臨床検体解析は、急性骨髄性白血病以外の症例も含め8例が集積され、5-azadc添加検討条件が確定した。
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今後の研究の推進方策 |
急性骨髄性白血病株NB4、急性単球性白血病株THP-1に、PU.1過剰発現プラスミド、PU.1siRNAプラスミドを導入し、PU.1発現改変細胞を作製し、5-azadcとの効果関連の検討を行う。さらに、PU.1標的遺伝子(MT-1、VIM)の機能解明のため、これら遺伝子過剰発現株をさらに作成し、分化・増殖における役割、5-azadc効果について検討する。臨床検体を用いた解析も引き続き行い、PU.1発現と薬効の関連について検討を進める。さらに、臨床検体より抽出したゲノムを用いて、MT-1、VIM 遺伝子プロモーター領域のメチル化割合と、これら遺伝子の発現関連について検討を行う(本学医学部倫理委員会承認済み)。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学的実験試薬(DNAメチル化アッセイキット、シークエンス試薬、cDNA合成キット、定量PCR試薬、細胞増殖アッセイキット他):65万円細胞培養試薬(血清、培地、他消耗品):40万円、プラスチック器具:20万円、研究補助員人件費:60万円、国内学会発表旅費:5万円
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