研究概要 |
PU.1発現と5-azadc効果関連分子機構の解明:前年度にはPU.1を過剰発現した慢性骨髄性白血病(K562)細胞株(K562PU.1OEcells)を樹立し、PU.1発現と5-azadc効果について報告した(BBRC, 420(4), p775-781, 2012)。さらに、PU.1とメチル化阻害剤との関連を確証するために、現在、急性単球性白血病(THP-1)細胞株を用いて新たなPU.1過剰発現細胞株の樹立を試み、一部樹立に成功した。樹立された過剰発現株はやはり5-azadcに対し高感受性であった。現在さらに新たな株を作成し、その効果を検討中である。 PU.1発現低下に伴う標的遺伝子発現上昇意義の検討:PU.1下流標的遺伝子として独自に同定した、メタロチオネイン(MT)-1、ビメンチン(VIM)が、実際の骨髄球系細胞分化でも、PU.1によりエピジェネティックに制御されているか、THP-1細胞をフォルボールエステル(TPA)によりマクロファージに分化誘導する系を用いて検討を行った。その結果、MT-1は分化と共にその発現がPU.1と負に相関し、PU.1がメチル化CpG結合蛋白(MeCP)2と共にMT-1Aプロモーターに結合し、PU.1結合領域のプロモーターメチル化割合を上昇させることで、分化と共に本遺伝子発現を抑制していることを見出した(BBRC, 433(3), p349-353, 2013)。また、前年度迄に、MT-1の骨髄系細胞における役割を明らかにする為、MT-1過剰発現NB4細胞(NB4MTOEcells)を作製し、全トランス型レチノイン酸による分化が、NB4MTOE細胞にて抑制されていることを明らかにしている。今年度は、MT-1による分化阻害の機序として、MT-1過剰発現が、細胞増殖停止・分化制御に関わるp53の転写因子機能を阻害する機序を見出した(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PU.1下流標的遺伝子として独自に同定した、メタロチオネイン(MT)-1、ビメンチン(VIM)が、骨髄球系細胞分化でも、PU.1によりエピジェネティックに制御されているか検討を行った。VIMにおいて関連は認められなかったものの、MT-1に関しては、やはりPU.1が骨髄球系細胞分化において、DNAメチル化活性、ヒストン脱アセチル化活性により制御していることが判明した(BBRC, 433(3), p349-353, 2013)。独自に同定したPU.1-MT-1経路が、骨髄球系細胞分化の過程において、実際制御されているということを明らかにしたのは重要である。 臨床検体解析に関しては症例の集積が進まず、検体に対する5-azadcの効果は検討不可能である。また、臨床検体からのゲノムメチル化解析では、集積された症例が少ないため現在3例しか検討していないが、MT-1発現とMT-1メチル化との間にこの少ない症例では関連が認められなかった。すなわち、メチル化解析ではなく、PU.1またはMT-1発現解析が薬効効果予測に重要である可能性が示唆された。 また、MT-1による骨髄球系分化阻害を明らかにし、その機序としてp53の機能阻害を引き起こしていることを見出した(論文投稿中)。
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