研究課題/領域番号 |
23590687
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高橋 伸一郎 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (40375069)
|
キーワード | エピジェネティック / バイオマーカー |
研究概要 |
これまでに、申請者はPU.1を過剰発現した慢性骨髄性白血病(K562)細胞株(K562PU.1OEcells)およびPU.1siRNAを発現することにより恒常的にPU.1発現を低下させた細胞株(K562PU.1KDcells)を樹立し、PU.1発現とエピジェネティック薬剤である2-aza-5'-deoxycytidine (5-azadc) 効果の関連について報告した(BBRC 2012)。そこで、5-azadc同様、造血器腫瘍において分化誘導を引き起こす様々な抗がん剤(シタラビン[Ara-C]、ダウノルビシン等)を投与し、その効果を検討したところ、やはりPU.1発現と低用量Ara-C効果との間に関連が認められることを見出した(Biomedical Reports, in press)。 また、これまでに、MT-1の骨髄系細胞における役割を明らかにする為、MT-1過剰発現NB4細胞(NB4MTOEcells)を作製し、全トランス型レチノイン酸による分化が、NB4MTOE細胞にて抑制されていることを明らかにしている。今年度は、MT-1過剰発現が、分化障害のみならず、異常細胞増殖にも関与していることを明らかにした(2013日本血液学会口演)。申請者のPU.1及び下流遺伝子機能解析に関する独創性は、海外でも注目され、2014年1月にイタリアのパレルモで開催された、Time on advances in haematological disorders: the “target” therapy会議に招待され、講演(Takahashi, Acute myeloid leukemia biology: recurrent mutations, and analysis of PU.1 target genes)を行い、同会議より感謝状が授与された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度報告したように、MT-1のメチル化解析ではなく、PU.1またはMT-1発現解析が5-azadc等の分化誘導をもたらすエピジェネティック薬剤の効果検討に重要であることが明らかになった。 そこで平成25年度は、まず最初に、既に樹立された各種PU.1発現改変K562細胞を用いて、PU.1発現と抗がん剤の効果を検討したところ、シタラビン(Ara-C)とPU.1発現との間に関連が認められることが判明した。 また、MT-1であるが、MT-1の発現も分化誘導剤である全トランス型レチノイン酸(ATRA)の効果と関連し、平成25年度は(1)MT-1過剰発現が、急性前骨髄性白血病細胞株において異常細胞増殖にも関与していることを明らかにした。さらに、(2)MT-1過剰発現が一部の抗がん剤、特にAra-C耐性にも関与していることを見出した。MT-1過剰発現がNB4細胞における分化阻害に関与していると言う発見は、現在、投稿中論文受理に必要な追加実験を行っており、公表する直前である。本発見により、造血器腫瘍における分化誘導剤および抗がん剤の有用なバイオマーカーとして、MT-1が着目される可能性が考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、MT-1過剰発現がNB4細胞における分化阻害に関与していると言う発見を英文受理に必要な追加実験(分化誘導前後のMT-1過剰発現株とコントロール株の形態学的な変化の確認、MT-1発現の分化誘導前後の発現の確認等)を行い、英文受理・データの公表に向けて推進する。また、各種抗がん剤のMT-1過剰発現細胞に対する効果を検討して、抗がん剤のバイオマーカーとしてのMT-1の働きについて検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
MT-1機能解析のため、K562、THP1等の細胞株を用い、新たなMT-1過剰発現細胞株の作製を試みたが、充分なMT-1発現が認められないことが判明し、作製を中止した。そこで計画を変更し、MT-1の分化に及ぼす影響を解明することとした。つまり、既に樹立したMT-1過剰発現NB4細胞を用いて種々の分化誘導剤効果を検討し、機序を明らかにすることとしたため、樹立、解析に関わる費用に未使用額が生じた。 このため、既に樹立した細胞株を用い、MT-1の分化に関わる機序を明らかにすることとした。研究に必要な試薬、材料は既にほぼそろっているため、残りの実験を遂行する研究補助員の謝金をその経費に充てることにしたい。最終年度に国際学会で発表するための経費を計上していたが、平成26年1月にイタリアのパレルモで開催された国際会議で、申請者の招待講演が行われ、本研究で行った研究内容の一部(Takahashi, Acute myeloid leukemia biology: recurrent mutations, and analysis of PU.1 target genes) を発表してきたため、同旅費の計上も取り下げた。
|