研究実績の概要 |
平成26年度は、メタロチオネイン(MT)-1の分化に及ぼす影響を解析した。すなわち、既に樹立しているMT-1過剰発現細胞を用いて種々の分化誘導剤効果を検討し、機序を明らかにすることとした。そこで、MT-1遺伝子を導入し作製したMT-1過剰発現急性前骨髄球性白血病細胞を用いて、各種分化関連遺伝子の発現解析、好中球殺菌能評価による機能評価、形態学的検討、細胞周期解析等、様々な角度から検証を行った。その結果、これら全てに異常が起こり、MT-1が、全トランス型レチノイン酸の分化誘導効果を著しく阻害するということを見出した(Hirako et al., PLOS ONE 2014)。またこれら一連の研究により、MT-1遺伝子発現の検討が、分化誘導療法の効果を予測するバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。 さらに、申請者が独自に同定した、MT-1制御因子であるPU.1の分化への影響に関しても検討を行った。PU.1発現低下K562(慢性骨髄性白血病)細胞、及びPU.1過剰発現K562細胞を用いて、同細胞の赤芽球系分化誘導効果が有る低用量シタラビン(Ara-C)を添加すると、PU.1発現低下K562細胞において、著しく分化誘導効果が減弱していることを見出した(Nakano H et al., Biomed. Rep., 2014)。エピジェネティック薬剤の白血病細胞に対する効果も分化誘導作用によるものであり、やはりPU.1の効果と関連していることが判明している(Aoyama S et al., B. B. R. C. 2012)。以上より、PU.1の発現検討が、造血器腫瘍におけるエピジェネティック薬剤効果予測マーカーとして有用である可能性を示唆する発見となった。
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