研究概要 |
多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)の耐性獲得機構を知るために、MDRPなどの薬剤耐性株を含む臨床分離緑膿菌98株について、耐性に関与する遺伝子発現や変異を調査した。H23、H24年度に引き続きMDRPに特徴的な薬剤耐性遺伝子について、いずれの遺伝子が多剤耐性を示す指標として最適か検討した。H25年度は緑膿菌の薬剤排出ポンプ(Efflux pumps)であるmexAB, mexEF, mexXYの発現を中心に検索した。遺伝子型の相同性は、Diversi Lab遺伝子解析装置を用い、メタロβラクタマーゼ(MBL)はスクリーニングテスト(栄研化学)にて検出、mexAB, mexEF, mexXYの発現は、mRNAを定量的real time PCR法にて調べた。Multilocus sequence typing(MLST)法アリルプロファイリングによるsequence type (ST)では、98株は16タイプと該当なし(6検体)に分類された。これまでの研究成果から、メタロβラクタマーゼ(MBL)獲得の有無、oprD欠損の有無、アミノグルコシドアセチル化酵素の発現、mexCDに関するmRNA発現量は、全ての緑膿菌耐性化に共通する項目ではないことが確認された。H24年度に引き続き臨床分離株のmexAB, mexEF, mexXYの発現を標準株(PAO-1)と比較したところ、検体材料や採取時期、菌株の遺伝子相同性、sequence typeに関係なくMDRPにおいてmexEFまたはmexXYが強発現していた。mexEFおよびmexXYの発現検出とモニタリングは、多剤耐性化の動向の把握および感染制御の指標として有用であることが確認された。 アシネトバクターにおいては、当院を含め本邦でのアウトブレイクを起こした菌株は世界的に報告されているST92ファミリーであった。薬剤排出ポンプの関与は緑膿菌ほど強くはなく、多剤耐性Acinetobacter baumannii(MDR-A.baumannii)臨床検体株での耐性獲得機構の解析を緑膿菌同様の手法で進めている。
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