研究課題
まず、種々の癌幹細胞マーカーの候補とATBF1(D1-120)との二重染色を試みたが、互いにうまく発色せず、未だ成功していない。また、最近脳組織において関連性が示唆されているATM、CREBと、ATBF1との関連性を解析しようと免疫染色を試みた。CREBは、反応性中皮(以下RMC)も悪性中皮腫(以下MM)もともに核に染色され、ATMは、RMCもMMも細胞質に染色され、それぞれ有意な関連性は免疫組織化学的には認められなかった。さらに、ATBF1の別部位を認識する新規ATBF1抗体MB034とMB044を用いて免疫組織化学を行った所、興味深い結果が得られた。MB034ではMMの22例中1例を除き、すべての症例で核内にドット状の強い陽性像が認められた。RMC20例ではほとんど染色されなかった。またMB044では、MM22例中20例で、核内にびまん性に強い陽性像が認められ、細胞質により弱い染色性が認められた。RMCでは、20例のいずれも核と細胞質に弱い染色性が認められるのみであった。これらの結果より、MMとRMCとの間にはATBF1の発現量および細胞内局在に明らかに違いがあると考えられた。M034がドット状に染色された理由は明らかでない。ドットは核小体の形状に類似していることから、ATBF1は部分的に核小体に結合し、悪性腫瘍において何らかの機能を果たしている可能性がある。D1-120抗体を用いた昨年度の結果では、悪性度が高まるほど核内の発現が低下し、細胞質での発現が増加したことより、ATBF1は悪性化に伴って、蛋白の部位により細胞内局在が変化しているか、細胞内で分断されて存在している可能性が考えられる。今後はこの点に注目し、研究を行っていきたい。また、今回の研究より、MB034がMMとRMCとの鑑別に有用である可能性が示された。
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Am J Clin Pathol
巻: 141 ページ: 85-93
10.1309/AJCP5KNL7QTELLYI.