研究課題/領域番号 |
23590693
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
東本 祐紀 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20569701)
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研究分担者 |
吉川 哲史 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80288472)
井平 勝 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, 准教授 (10290165)
榎本 喜彦 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00387713)
杉山 博子 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10387714)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
Human herpesvirus 6 (HHV-6) は、発見当初から2種類のspecies ( variant A, B) に分けられている。 HHV-6 Bの初感染像は、我々を含めわが国の研究者により突発性発疹 (突発疹) であることが明らかにされている。一方、HHV-6 Aに関する感染形態は未だ明らかにされていない。そこで、HHV-6 Aの初感染像、血清疫学解明を目的として、現在まで困難を極めているHHV-6 species特異的抗体測定法の確立を目指す。HHV-6 AとHHV-6 B間の遺伝子相同性は95%以上で、当然アミノ酸レベルでの相同性も高いことから、既存の感染細胞を抗原として用いた間接蛍光抗体法では抗体の交差反応性が問題となる。一方、特異性の高い中和抗体法は作成困難なフリーウイルスを大量精製せねばならず現実的ではない。この問題点を解決するには、宿主免疫の標的となり、かつ両virus species間で遺伝子ならびにアミノ酸レベルで相同性の低い領域について人工的に蛋白を合成し、それを抗原としたELISA系による抗体測定法を確立するしかない。宿主免疫の標的となり、且つ2種類のvirus species間で相同性の低い遺伝子について、大腸菌発現系にて蛋白発現系を作製した。精製した候補遺伝子であるU11遺伝子領域の合成蛋白を用いて、ウェスタンブロッティングにてHHV-6A, B感染患者血清75検体との反応性を確認した。 突発疹患児では81.4%でHHV-6B陽性となり、HHV-6A患者3名のうち2名がHHV-6A陽性となった (J Clin Microbiol. 2012;50:1245-1251)。今後はU11遺伝子領域の合成蛋白抗原を用いたELISA系を設計し血清疫学調査を実施、HHV-6各speciesの感染状況を把握する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HHV-6型判別を行う上で重要なHHV-6A, B間で相同性の低い遺伝子領域を選定した。さらに特異抗体検出に用いるために、ウイルス表面に存在しているタンパクで、且つ抗原性を有していることを条件とした。選択した遺伝子領域のタンパク発現系を作製し、ウェスタンブロッティングにてHHV-6 B既感染者血清(38検体)、突発疹患児ペア血清、HHV-6A感染患者血清(Dr. Dan Petersonらより分与、HHV-6 Foundationとの共同研究)、HHV-6再活性化として造血幹細胞移植(HSCT)患者ペア血清、Drug induced hypersensitivity syndrome(DIHS)患者ペア血清計75検体との反応性を確認した。その結果、突発疹患児では81.4%でHHV-6B陽性となり、HHV-6A患者3名のうち2名がHHV-6A陽性となった (J Clin Microbiol. 2012;50:1245-1251)。以上の結果から、我々がバイオインフォマティックスを基盤として選定した候補遺伝子からの人工的蛋白発原に成功し、かつ発現蛋白が各speciesに特異的な被検者抗体を検出し得ることが明らかとなった。よって、当初の目標はほぼ達成できたと考えている。本研究では、未だに明らかになっていないHHV-6Aの初感染像、血清疫学解明を目的としている。そのためには世界規模での大規模調査が必須であり、今後は今回合成した発現蛋白を用いたELISA法の開発が望まれる。ただし、我々のpreliminaryな研究の結果、発現蛋白の精製が困難を極めており、そのままELISA用抗原として用いるのは困難と考えられる。よって、その改善策として、U11遺伝子領域から合成ペプチドを作製、ELISA法の抗原として使用し、HHV-6感染の解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究により、HHV-6 U11遺伝子領域におけるタンパク発現系を用いたウエスタンブロッティング法を確立した (J Clin Microbiol. 2012;50:1245-1251)。今後はHHV-6 U11遺伝子領域から合成ペプチドを作製、ELISA法の抗原として使用し、HHV-6感染の解析を進めていく。そのために、抗原のプレートへの固相法、ELISA法の条件設定など、抗体測定系の各種条件設定を行なう。このELISA法確立のための抗原精製法の条件設定に次年度研究費の多くを使用する予定。さらに本邦の年齢別血清を収集し、ELISA法によるHHV-6 A, B血清疫学調査を実施する。使用する血清は、健常成人コントロールとしてHHV-6 B既感染者血清を使用、突発疹患児ペア血清、HHV-6A感染患者血清、HHV-6再活性化として造血幹細胞移植(HSCT)患者ペア血清、Drug induced hypersensitivity syndrome(DIHS)患者ペア血清で、まずは本邦での血清疫学調査を実施する。HHV-6A感染患者は本邦には少ないことから、海外研究者との共同で、世界規模での血清疫学調査を実施することを考えている。またpolymerase chain reaction (PCR) 法をはじめとした遺伝子学的解析により、主にHHV-6Aは中枢神経を中心とした難治性疾患への関与が示唆されている。特に欧米では多発性硬化症や中枢神経症状を伴った慢性疲労症候群へのHHV-6Aの関与が示唆されており、上記患者での血清疫学調査を実施する予定である。これにはHHV-6 foundationとの共同研究を考えている。このような国際的共同研究実施に際しても若干の研究費を要する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画を実施するうえで必要な機器は、ほとんど現有の我々の研究室にある。ゆえに研究費のほとんどを、ELISAを実施する上で必要となる消耗品の購入に充てる。1.U11遺伝子発現蛋白作成:LB Broth, IPTG (Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)により発現蛋白を作製し、ECL Western Blotting Detection System (GE Healthcare), Anti-His-tag抗体およびanti p100 抗体を用いて、発現蛋白作成をウェスタンブロッティングにて確認する。予算として約30,000円を計上する。2.発現蛋白精製:発現蛋白はHis tagが付加されているため、Ni-NTAカラム精製法を考えている。preliminaryな研究では精製が困難であったため、変性剤(GuHCl、UREA)、還元剤、界面活性剤(Tween 20, Triton X-100, CHAPS)、グリセロール、イミダゾール、エタノールを使用して精製条件の設定を試みる。予算として300,000円を計上する。3.ELISA法の条件設定:ELISA法を実施する上でanti Human IgG-HRP,およびTMB発色試薬を必要とする。予算として600,000円を計上する。4.海外からの検体送付費:予算として50,000円を計上する。
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