研究課題
6P-3-2-4および7P-9-11-6の認識抗原同定を目的とし、抗原陽性細胞培養上清(約2L)を濃縮後、ゲル濾過にて部分精製が完了し、現在イオン交換カラムの条件設定を行っている。また、人工糖鎖抗原を用いた解析の結果、6P-3-2-4抗体はTn抗原を認識していることを第70回日本癌学会学術総会(P-1389)および日本薬学会第132年会(30P2-am158)にて報告した。その結果、6P-3-2-4抗体認識抗原は、抗原精製後LC/MS/MSにてコアタンパク分子の解析が必要であることを確認した。また、これら2種の単クローン抗体抗原陽性細胞株であるKMC-1細胞よりmRNAを単離精製し、pcDNA3を用いたexpression cloning用のcDNA Library作製を数回行ったが、未だ充分なサイズのLibraryの作製には至っておらず、今後も作製を試みている。さらに、23年度において、挑戦的萌芽研究(2009-2010:課題番号21659151)における連携研究協力者(矢野ら:久留米大学)により新たに2P-1-2-1抗体が膵腺房細胞特異的抗原を認識し、膵腺房細胞癌の病理学的鑑別診断に有用であることを発表した(The utilityof a novel antibody in the pathological diagnosis of pancreatic acinar cell carcinoma: J Clin Pathol. 2012 Apr;65(4):327-32.)。この2P-1-2-1は、他の2種類の単クローン抗体と同一細胞株に対して反応するため、抗原解析対象抗体とした。現在2P-1-2-1抗体認識分子は、ゲル濾過にて分子量約130kDaであることを確認している。
2: おおむね順調に進展している
実験の達成度としては、Expression cloning用cDNA Libraryの作製に関して、充分なサイズのライブラリーが得られておらずやや遅れが認められるが、cDNA Library作製用キットに適応する市販の発現ベクターの使用とpcDNA3 vectorの再調整により、今年度内のexpression clonigの開始は可能である。また、抗原分子の単離精製に関しては、イオン交換カラムの選定および分離条件がほぼ確定し、免疫沈降用カラムも準備が終了しており、今年度中旬までには受託LC/MS/MS解析の結果が得られると予測され、順調な経過と思われる。
研究実績の概要において述べたように、cDNA Library作製にやや遅れが見られており、培養上清からのゲル濾過、イオン交換カラムおよび免疫沈降法にて抗原を精製し、最終的にSDS-PAGEにて高純度に抗原分子を切り出し、受託LC/MS/MS解析を中心に実験を進める。さらに候補分子の同定後、mRNA増幅用プライマーを作製し、抗原分子の全長cDNA単離と確認を主な計画とする。また、KMC-1細胞のmRNAより、pcDNA3を用いたexpression cloning用のcDNA Library作製に関しては、未だ充分なサイズのLibraryの作製には至っておらず、今後も作製を試みる。さらに、新たに有用性を報告した2P-1-2-1抗体認識抗原に関しても同様な方策にて同定を試みる。同年度内に抗原の全長cDNAが単離・同定された場合は、全アミノ酸構造より抗原として適当な部位のポリペプチドを免疫原として単クローン抗体の作製を試みる。
次年度の研究費の使用計画としては、(1)培養上清からゲル濾過、イオン交換カラムおよび免疫沈降法を用いて抗原分子を精製濃縮し、最終的にSDS-PAGEにて単離・精製された抗原分子を含むゲルの受託LC/MS/MS解析(3検体)し、候補分子の同定とcDNA増幅用プライマーを設定して、全長cDNAの単離を試みる(約60万円)。(2)抗原陽性細胞からのmRNAの単離とcDNA合成とpcDNA3への組込を継続して行い、充分なライブラリーサイズのExpression cloning用cDNA Libraryを作製する(30万円)。(3)当該年度の研究結果を主に国内学会にて発表する(旅費:10万円)。(4)6P-3-2-4抗体の認識エピトープがTn抗原であることの補充データを集めて、適当な英文雑誌に投稿する(投稿費:10万円)。
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J Clin Pathol.
巻: 65 ページ: 327-332
Int J Mol Med.
巻: 28 ページ: 599-603