研究課題
腹部脂肪組織分布と血漿高密度リポ蛋白(HDL)亜分画の関係肥満症は耐糖能異常、脂質異常症に合併することが多く、虚血性心疾患の危険因子である。生体内の脂肪組織分布[内臓脂肪組織(VAT)と皮下脂肪組織(SAT)]は、糖代謝・脂質代謝と関連する。従って、本研究は、腹部脂肪分布とHDL亜分画の関係を検討することを目的とした。研究対象は、腹部コンピューター断層撮影(CT)による腹部VAT面積が100 cm2以上の男性12名(平均年齢:47.5歳)及び女性36名(平均年齢:62.0歳)。SATの量(面積)と腹部周囲経(CW)も同時に計測した。空腹時血漿HDL亜分画はキャピラリー等速電気泳動(cITP)によって分析した。HDLは電気泳動移動度の遅い順に、速移動性HDL(fHDL)、中間移動性HDL(iHDL)と、遅移動性HDL(sHDL)に分画された。女性は、男性に比して、内臓脂肪量が低く、体脂肪率と皮下脂肪量が有意に高かった。女性において、VATは空腹時血糖及びHbA1cと正に相関し、SATはレプチン、C反応性蛋白(CRP)、cITP sHDLと正に相関した。男性と女性において、cITP fHDL・iHDLとsHDLは、血清脂質と異なる関係を示した、つまり、fHDL・iHDLはトリグリセリド(TG)と負に相関し、HDL-コレステロール(C)とアポA-Iと正に相関したが、sHDLはTG、HDL-CとアポA-Iと相関しなかった。多変量解析では、女性において、年齢、VAT、レプチン、CRPで補正しても、SATとsHDLの間に有意な関連を示した。以上の結果により、男性と女性は腹部脂肪組織の分布が異なり、女性の腹部皮下脂肪はキャピラリー等速電気泳動による遅移動性HDL亜分画と関連した。以上より、内臓脂肪組織量が多い場合は、腹部皮下脂肪組織量は、HDLの組成(亜分画)に影響する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
H24年度に計画した“メタボリックシンドローム(MetS)患者におけるcITPリポ蛋白亜分画と内臓脂肪量との関連の検討”は予定通りに終了した。
H25年度に冠動脈疾患(CHD)患者におけるcITPリポ蛋白亜分画と冠動脈狭窄との関連の検討をする。
H24年度で終了した“メタボリックシンドローム(MetS)患者におけるcITPリポ蛋白亜分画と内臓脂肪量との関連の検討”の研究では、共同研究を組んだことによって節約ができ、繰越金が生じた。繰越金と翌年度以降に請求する研究費は、“冠動脈疾患(CHD)患者におけるcITPリポ蛋白亜分画と冠動脈狭窄との関連”という課題の検討に使用する。主にキャピラリー等速電気泳動(cITP)法と超遠心法によるリポ蛋白分析などの測定とバイオマーカー測定薬品に使用する。
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