研究課題/領域番号 |
23590702
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
尾田 高志 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 准教授 (90531187)
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研究分担者 |
熊谷 裕生 防衛医科大学校・医学教育部医学科専門課程, その他部局等, 教授 (50170048)
櫻井 裕 防衛医科大学校・医学教育部医学科専門課程, その他部局等, 教授 (00235227)
山上 和夫 防衛医科大学校・医学教育部医学科専門課程, その他部局等, 准教授 (20531437)
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キーワード | 尿解析 / 腎疾患 |
研究概要 |
腎生検に比較し、尿検査は非侵襲的で、腎臓全体の病態を反映して変化する可能性から診断・予後判定上の有用性が考えられる。尿沈渣中の細胞成分の蛋白やRNAを解析することにより、より正確で安全な腎疾患の診断や予後判定を確立することを目的として研究を進めている。平成24年度までに、採取・保存してきた、各種腎疾患患者200例の尿沈渣中の細胞を使用し、蛍光免疫細胞染色でCD68(マクロファージ)、好中球エラスターゼ(好中球)、サイトケラチン(尿細管上皮細胞)、クローディン1(ボーマンのう上皮細胞)、シナプトポディン(足細胞/ポドサイト) の蛋白レベルでの発現解析を終了した。平成25年度は、蛋白レベルで腎臓の炎症との関連がみられた、CD68(マクロファージ)、好中球エラスターゼ(好中球)、クローディン1(ボーマンのう上皮細胞)に関して、mRNAレベルでの発現を尿沈渣から抽出したtotalRNAを用いたreal time RT-PCR法により解析した。CD68、クローディン1のmRNAは特に問題なく評価できたが、好中球エラスターゼのmRNAは全く検出できなかった。そこで、好中球と関連した3分子(CD66b, CD16a, myeloperoxidase)のmRNAの発現も解析したが、これら全てが全く検出できなかった。一方、血液由来の白血球から抽出したRNAを用いると、これら全ての発現が確認できたことから、尿中の好中球は蛋白合成能を喪失し、mRNAレベルでの検出に向かないものと思われた。今後、mRNAレベルでの解析結果と、臨床検査・組織所見との関連性を検討し、腎疾患の診断や病状・予後判定に有用な解析を選び出していく予定である。このような結果は、より安全で効果的な、腎疾患治療体系の確立につながることから、非常に意義深いものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進行がやや遅れているとした最大の理由は、研究の中心的役割を担う研究代表者の尾田が、平成26年3月31日に他大学に異動するという予定外のイベントがあったことに起因している。異動に伴う雑務のため、平成25年度の終盤は100%の状態での仕事とはならなかった。また、異動先の異なる研究室の環境下で、これまで同様に研究を継続できるよう研究室をセットアップしていく作業が平成26年度の初旬に見込まれるため、この意味も含めて、やや遅れているとした。具体的な研究内容としては、CD68、クローディン1に関しては、それらマーカーのmRNA発現をreal time RT-PCR法により定量できた。一方、好中球エラスターゼに関しては、概要で述べたような事情で評価できなかった。mRNAレベルでの評価に関して大きな問題点は、通常mRNAの発現解析ではGAPDHなどの内因性コントロールを使用して発現量を補正した結果として算出するが、本解析においてはGAPDHを用いた補正をすると全く有意な所見が得られなかった。この原因として、尿中には、尿管や膀胱上皮など腎臓以外からも多くの細胞が混入するため、結果がマスクされてしまう可能性が考えられた。従って、腎臓由来のコントロールとしてしばしば使用されるアクアポリン2での補正を検討したが、アクアポリン2のmRNAは約半数例でしか検出できず、半数の症例が評価できない結果になってしまった。そこで、最終的に補正することなく、mRNAの絶対値にあたるΔCT値の結果に基づいて評価することとした。このように、mRNAの解析の方法、結果の解釈にやや手間取った面がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずは、異動先の研究室の環境を整備するため、パソコン、プリンター、冷蔵庫などや、図書・雑誌などの購入を早急に進める。その上で、これまで実施した解析結果を詳細に評価し、解析不足点を十分に洗いだし、追加実験の必要な点に関しては実施を進める。なお、尿沈渣細胞のFACSによる解析は、死細胞による非特異的なバックグランドを消すことができず、中断する方針とした。
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次年度の研究費の使用計画 |
異動予定があり、平成25年度終盤においては100%の仕事ができなかった。また、国際学会、アメリカ腎臓学会への参加予定に関して、都合が合わず、不参加となったことも大きく影響した。 異動に伴い、新しい研究室の環境セットアップが必要であり、冷凍冷蔵庫、パソコン、プリンター、研究用の消耗品や試薬などによる細かい出費で約70万円程度かかるものと考える。
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