研究課題
腎生検に比較し、尿検査は非侵襲的で腎臓全体の病態を反映して変化する可能性から診断・予後判定上の有用性が考えられる。尿沈渣中の細胞成分の蛋白やRNAを解析することにより、より正確で安全な腎疾患の診断や予後判定を確立することを目的として研究を進めている。平成26年度は平成25年度に続き、尿沈渣から抽出したtotal RNAを用いたreal time RT-PCR法による解析を実施した。平成25年度の解析で、好中球関連のmRNAの発現は解析できないことが判明したため、平成26年度はマクロファージ関連マーカーに関して、より詳細に解析を進めた。マクロファージには炎症誘導性に働くM1マクロファージと、炎症抑制性・修復に働くM2マクロファージの2種類が存在することが知られている。この点に関してM2マクロファージのマーカーとして、CD163, CD204, CD206, IL-10を、M1マクロファージの指標として、iNOS, IL-6を選んで、それらのmRNAの発現レベルを解析した。その結果、M1マクロファージのマーカーには、腎疾患の診断や病態が変わっても変化がなかったが、M2マクロファージのマーカーは半月体形成を伴う腎疾患で半月体形成を伴わない腎疾患に比して有意に発現が増強していることが判明した。この結果から、半月体形成を伴う活動性腎疾患の尿中にはM2マクロファージが主として増加し、M2マクロファージ関連マーカーのmRNAレベルでの解析は、腎炎活動性の指標として有用である可能性が考えられた。
3: やや遅れている
平成26年4月1日付で、研究代表者の尾田が東京医科大学へ異動となった。新たな職場での臨床・教育システムに慣れるのに手間取り、混乱、研究遂行に遅れが生じた。研究室の環境が大きく変わり、研究を継続するために研究室を新たにセットアップすることが必要になり、多大な時間と労力を要した。
これまでに尿沈渣に関して、構成細胞マーカーの蛋白レベルおよびmRNAレベルでの発現解析結果が出そろった。これらの膨大な結果をまとめ、臨床・病理所見との関連性を最終判定し、データの不十分な部分を洗い出し、論文化、投稿する予定である。データのまとめ、統計学的な評価を実施するのに必要なソフトを新しい研究室にも購入・準備する予定である。
研究代表者の異動に伴い、研究環境の大きな変化があり、研究計画に遅れが生じるとともに、国際学会やアメリカ腎臓学会への参加を中止としたこと、論文の作成・投稿ができていないことなどが、次年度使用額が生じた理由である。
次年度は、論文投稿を見据えて、必要な追加実験の実施、統計学的な解析の再確認が必要だが、異動に伴って、研究室の統計ソフトや画像解析ソフトの購入が必要になった。これらや、当該研究に必要な消耗品に、約65万円の追加出費を充てる。準備を整え、論文の作成、投稿、学会への発表など、最終的な研究のまとめを次年度の予算と合わせて遂行したい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (15件)
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