研究実績の概要 |
尿検査は非侵襲的で、腎臓全体の状況を反映して変化する可能性から腎疾患の診断・予後判定上の有用性が考えられるが、その詳細な解析は少ない。そこで尿沈渣中の細胞成分に関して、各種のマーカーを免疫細胞学的な蛋白レベルでの発現とリアルタイムRT-PCR法によるmRNAレベルでの発現に関して解析し、その結果と臨床検査成績・腎組織病理所見などとの関連性を統計学的に検討した。尿沈渣中の細胞成分の種々のマーカー発現レベルは、各種糸球体疾患の鑑別診断という意味では有用性は低かったが、CD68, claudin-1, 好中球エラスターゼの蛋白レベルでの発現の程度や、CD68, claudin-1, macrophage M2 マーカーのmRNAレベルでの発現の程度は、腎糸球体における活動性病変(半月体形成)の有無と有意に関連したことから、尿中の細胞成分の解析は腎疾患の病態把握に有用であることが判明した。さらに、これらのマーカーの発現に関して、糸球体半月体形成へのLogistic regression解析を実施したところROCカーブのAUCは0.6-0.69で全て統計学的に有意であった。ただしこのAUCは血尿レベルによるAUC(0.70)よりも低値であり、これらマーカーは単独で判定するよりも血尿の結果を合わせて評価した方がより正確である可能性が考えられた。実際、血尿+各種マーカー蛋白発現レベルの複合評価でのAUCは0.73-0.75と血尿単独でのAUCよりも高値であり、腎疾患の活動評価において、これらマーカーの評価の追加が有用であるものと考えられた。これらの結果をまとめて論文化し、英文誌に投稿中である。
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