研究課題
レーザーマイクロダイセクション法などを援用し、細胞特異的miRNAの同定を更に進めた。膵臓外分泌腺部に特異的なものとしてmiR-216を見出し、血液中のmiR-216を膵炎の診断に使えることを明らかにした。膵臓ランゲルハンス氏島、下垂体前葉、松果体、網膜、前立腺などでも特異的なmiRNA候補を見出しており、順次臨床応用を考えていきたい。miRNAの発現パターンは、細胞特異的であり、miRNAの発現パターンから細胞の由来を同定できる。miR-1/133/143/145/208/499などの組み合わせで、血管平滑筋、消化管平滑筋、骨格筋、心筋など筋細胞各種の区別が可能であることを明らかとした。褐色脂肪細胞は、脂肪細胞由来と考えられてきたが、このmiRNAの発現パターンからは、極めて筋細胞に近いことも判明した。神経系に関しても、神経細胞、オリゴデンドロ細胞、アストロ細胞、マイクログリアなどを識別するmiRNAリストを作成した。この発現パターンから由来細胞を特定できる可能性は、ESやiPS細胞からの細胞分化の指標として使える可能性も示唆する。miR-210は幅広く種々の細胞で発現しているが、低酸素刺激で発現レベルが上昇する。生体内の低酸素バイオマーカーとして使える可能性があり、心不全患者で血漿及び末梢単核球中のmiR-210レベルを評価した。予測通り、心不全の重症度ともにmiR-210の発現レベルが増加することが判明し、新たな心不全バイオマーカーとして使える可能性を示すことができた。脂肪肝でmiRNA発現パターンが変化するか調べたが、大きな差異は見いだせなかった。
2: おおむね順調に進展している
発現レベルの高いマイクロRNAは、予想よりは少ない、あるいは現在の測定系では正確に定量できないものが多い、などが判明してきた。ただ、いくつかの成功例は提示できつつある。スクリーニングにマクロアレーを用いるのでは、良い候補を見逃す可能性もあり、small RNA libraryを作成して、次世代シーケンサーでの網羅的プロファイリングを行うべきかもしれない(予算的に困難だが)。
引き続き、病態との絡みで興味深い細胞種に関して、特異的miRNAの発見に努める。特に神経系に焦点を絞り、神経変性疾患の髄液診断に応用できないか、検討したい。マイクロRNAの発現パターンに組織特異性があるのは、ゲノムDNAのエピジェネティックな違いに基づく可能性が高く、障害細胞から漏出してくるゲノムDNAのエピジェネティックな状態を調べることで、由来細胞が特定できる可能性もある。この可能性も探る予定である。
レーザーマイクロダイセクション関連の消耗品マイクロRNA測定関連試薬病態モデル作成のための動物購入研究の方向性は定まってきており、最終年度にかけて熟練した研究員を従事させ、成果として結実させる予定である。そのために人件費を確保しておく必要があり、予算の繰り越しを行った。
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Biol Pharm Bull.
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Am J Physiol Endocrinol Metab
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10.1152/ajpendo.00425.2012.
http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/epidemiology/ep_003.html