研究課題
前年度までに、GABAA受容体γサブユニットの輸送に関与しているPRIP-1をノックアウトしたマウスを用いて、脊髄におけるGABAA受容体のサブユニット構成の変化や機能異常が痛覚異常を引き起こす結果を示した。一方、これまでの疼痛研究から、慢性疼痛の発症メカニズムには脊髄のミクログリアが深く関与していることが明らかにされている。ミクログリアには、ATPが結合するイオンチャネル型受容体(P2X1-P2X7)のうち、P2X4受容体やP2X7受容体が発現しており、疼痛発症に関与していることが報告されている。P2X4受容体は神経損傷による疼痛発症時にミクログリアでの発現増加が生じるのに対して、P2X7受容体では発現に変化はみられていない。しかしながら、P2X7受容体ノックアウトマウスでは神経損傷による痛覚過敏は消失することが報告されており、P2X7受容体が疼痛発症メカニズムに関わっていることは否定できない。P2X7受容体は、アゴニストが長時間作用すると電流増加及びポア拡大が生じる。これらの現象は、ミクログリアの多種多様の機能に密接に関わっていると考えられる。そこで、P2X7受容体の細胞内部分の役割を検討するために、アゴニストに対してP2X7受容体と異なり電流増加を生じないP2X2受容体とのキメラ受容体を作製し、チャネル機能の変化を解析した。P2X7受容体のC末配列は他のP2X受容体よりも長く、第二膜貫通部分近くにシステインが多く並んでいる配列があり、この部分がポアの拡大に関与していることを確認した。また、この部分はヒートショックタンパク質のHSP90と相互作用が示唆される結果を得た。今後、このシステインが豊富な配列部分を調節できる薬物や抗体を検索し、疼痛や細胞死などの生理機能を改善できるかについて検討していく必要がある。
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