研究課題/領域番号 |
23590711
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
今町 憲貴 島根大学, 医学部, 講師 (40325048)
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キーワード | ガバペンチン / 脊髄くも膜下 / 鎮痒効果 |
研究概要 |
μオピオイド受容体(MOR)アゴニストの合併症の一つとして痒みが知られている。マウスの脊髄くも膜下腔にMORアゴニストを投与すると痒み行動とされる引っ掻き行動が観察される。臨床上、MORアゴニストによる痒みはナロキソンにより拮抗されるが、同時に鎮痛効果も拮抗されるため有用ではない。【研究の目的】ガバペンチン(GBP)の脊髄くも膜下腔投与が MORアゴニストによる引っ掻き行動と鎮痛効果に及ぼす影響を検討した。【対象】C57BL/6系雄マウス【方法】(実験1)脊髄くも膜下腔にMORアゴニストである[D-Ala2,N-MePhe4, Gly-ol]-enkephalin (DAMGO) 3、10pmol、GBP 0.23μmol、DAMGO 10pmol+GBP0.23μmol、または、生理食塩液5μlを投与後30分間、引っ掻き行動をビデオ撮影し、総引っ掻き回数を解析した。(実験2)脊髄くも膜下腔にDAMGO 10pmol、GBP 0.23μmol、DAMGO 10pmol+GBP 0.23μmol、または、生理食塩液5μlを投与後60分間、マウスの尾を48℃の温水につけて反応するまでの潜時を測定した。また、DAMGO 10pmol投与15分前に腹腔内にナロキソン25μgを投与し、同様の測定を行った。結果は時間曲線下面積(AUC)で算出した。【結果】(実験1)DAMGO単独は生理食塩液に比べ、有意に引っ掻き行動が増加した。DAMGO単独と比べ、DAMGOとGBPの混合液は、引っ掻き行動が抑制された。(実験2)DAMGO単独とDAMGOとGBPの混合液は、AUC値に差はなかった。ナロキソン前処置はDAMGOのAUC値を減少させた。【結語】GBPの脊髄くも膜下腔投与はMORアゴニストによる鎮痛効果を減ずることなく引っ掻き行動を抑制したため、鎮痒薬として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果からガバペンチンが脊髄レベルにおいて術後痛を軽減するのに重要な役割があること、また、ガバペンチンは脊髄レベルでジクロフェナックの二次性痛覚過敏抑制効果を増強することが明らかとなり、この研究成果をまとめたものが、国際誌に掲載された。 ガバペンチンの脊髄くも膜下腔投与はMORアゴニストによる鎮痛効果を減ずることなく引っ掻き行動を抑制する得られ、鎮痒薬として有用であることが示唆されることを国内学会で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
MORアゴニストは強力な鎮痛効果があるものの、副作用として過鎮静、呼吸抑制、悪心、嘔吐、痒みなどの副作用が問題となっている。米国では区域麻酔としてオピオイドを用いたときのガイドラインが存在するが、本邦ではなく、安全な区域麻酔時のオピオイド使用が求められる。そこで、今後の研究の推進方策として、MORアゴニストの脊髄くも膜下投与による鎮痛効果、および、副作用である過鎮静、痒みを評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果が予想より明確に得られたため、予定より使用動物、薬品の使用量が少なくて済んだため、平成24年度未使用額202,316円が生じた。平成25年度は、平成24年度までに得られた研究成果を国内、海外の学会で発表をおこなう。これらの学会出張に研究費を使う。また、実験動物、薬品、統計ソフト、教科書などにも研究費を使用する予定である。研究成果がまとまれば、投稿用論文の校閲依頼をする予定である。
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