研究課題/領域番号 |
23590715
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
棚平 千代子 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (20555776)
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研究分担者 |
山本 達郎 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (20200818)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GPR103 / QRFP / 26RFa / 炎症性疼痛 / 神経障害性疼痛 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
GPR103-26RFa, QRFP系の侵害刺激伝達における役割を検討するために、本年はGPR103の内因性作動物質の1つであるQRFPのノックアウトマウスを用いた研究を行った。QRFPノックアウトマウスは、生理学研究所の山中章弘博士から提供を受けた。QRFPの神経障害性疼痛に対する影響を検討する前に、QRFPノックアウトマウスにおける侵害受容性疼痛と炎症性疼痛の反応性を検討した。侵害受容性疼痛として54.5℃ホットプレートテストを、炎症性疼痛としてホルマリンテストを用いた。ホルマリンテストは、1%ホルマリンを20ℓマウス後肢の足背に皮下注して作成した。痛み行動を、ホルマリン皮下注直後の反応(侵害受容性疼痛の成分;phase 1)と後半の反応(炎症性疼痛の成分;phase 2)に分けて検討した。ホットプレートテスト、ホルマリンテストにおけるphase 1及びphase 2の反応ともに、ノックアウトマウスとwild typeマウスに差を認めなかった。今回の結果からは、侵害受容性疼痛と炎症性疼痛時にQRFPは重要な役割を果たしていないことが示唆された。GPR103の内因性作動物質としては、QRFP以外に26RFaが存在している。以前の我々のラットホルマリンテストを用いた研究では、26RFaの髄腔内投与・脳室内投与により強力な鎮痛効果を確認した。この結果は、GPR103は炎症性疼痛において重要な役割を果たしている可能性を示している。今回の結果となった原因としては、26RFaがGPR103を活性化することによりQRFPの役割がマスクされてしまい、QRFPノックアウトマウスで鎮痛効果が見られなかったものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究では、QRFPのノックアウトマウスを用いた研究のみを行った。結果として、QRFPノックアウトマウスにおける侵害刺激伝達はwild typeのマウスと差が見られなかった。ノックアウトマウスを用いた研究の限界があるものと考えている。この結果から、ラット脳内へQRFP・26RFaをマイクロインジェクションする研究を早急に始めるべきであった。しかしながら十分な準備が出来ず、研究を始めることが出来なかった。来年度はQRFP・26RFaのマイクロインジェクションによる研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はQRFP・26RFaのマイクロインジェクションによる研究を進めていく予定である。GPR103が強く発現している部位で、しかも侵害刺激伝達に重要な部位にPAG、RVMがある。最初に炎症性疼痛であるホルマリンテストを用いて、QRFP・26RFaのPAG、RVMマイクロインジェクションの効果を検討する。次に神経障害性疼痛モデルであるTibial Neuroma Transposition (TNT) model、Seltzer model等を用いてQRFP・26RFaのPAG、RVMマイクロインジェクションの効果を検討する。我々は、26RFaの脳室内投与によりホルマリンテストで良好な鎮痛効果を報告してきた。本研究により26RFaの作用部位を特定することが出来る。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は、ラットを用いたマイクロインジェクションを行う研究を行う予定である。従って、研究費はラットの購入及び飼育の費用に充てる。またマイクロインジェクションを行うため、マイクロインジェクション用のカニュラを購入する。また手術を行うための麻酔薬などの経費も必要となる。さらに、QRFP及び26RFaが必要となる。これらのペプチドの購入経費も必要となる。
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