研究課題/領域番号 |
23590716
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
池田 哲也 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20264369)
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研究分担者 |
西森 利数 宮崎大学, 医学部, 教授 (20112211)
武田 龍一郎 宮崎大学, 医学部, 講師 (90336298)
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キーワード | 糖尿病性神経因性疼痛 / アロディニア / APGWamide / セロトニン / ノルアドレナリン / c-Fos / 下行性抑制系 |
研究概要 |
行動実験からAPGWamideは糖尿病性神経因性疼痛モデルラット(糖尿病ラット)のアロディニアを軽減し、この抗アロディニア効果はセロトニン(5-HT)レセプターのアンタゴニストとノルアドレナリン(NA)レセプターのアンタゴニストによって有意に抑制されることがわかった。また、アロディニアを示すラットは、足への温熱刺激によって、その神経投射部位である脊髄後角にc-Fosタンパクを発現する。このc-Fosの発現は痛み入力の指標とされており、免疫組織化学的な解析を行ったところ、糖尿病ラットの足底に温熱刺激を与えると正常ラットに比べて有意にc-Fosの陽性細胞数が増大する。APGWamideの髄腔内投与は、温熱刺激によるc-Fos陽性細胞数を正常ラットの場合と同程度まで減少させることが分かった。さらに、5-HTレセプターのアンタゴニストとNAレセプターのアンタゴニストはAPGWamideのc-Fos発現抑制作用を阻害した。このことから、糖尿病性神経因性疼痛を示すラットにみられるc-Fos発現の増大もAPGWamideによって顕著に抑制され、その効果は神経伝達物質である5-HTやNAを介している事が示された。これまでの行動学的実験の結果と同様に今回の免疫組織化学的実験の結果は、APGWamideの作用には下行性の疼痛抑制系が関与していることを強く示唆している。 上位中枢(大脳皮質、大脳基底核、扁桃核、視床、中脳水道周囲灰白質、大縫線核など)におけるAPGWamideの効果を明らかにするために、正常ラットおよび糖尿病ラットにAPGWamideを投与し、c-Fosタンパクの免疫組織化学を行ったが、両ラット群における有意な違いがまだ、得られていない。今後、APGWamideの投与経路の見直し、実験法の改善等を進めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型神経ペプチドであるAPGWamideの抗アロディニア効果を調べ、その作用機序を目的として研究を進めてきた。糖尿病ラットを用いた行動学的実験および免疫組織化学的実験はほぼ終了しており、別のモデルである坐骨神経圧迫モデルに対する実験を次年度に進めていく。さらに、上位中枢(大脳皮質、大脳基底核、扁桃核、視床、中脳水道周囲灰白質、大縫線核など)におけるAPGWamideの効果は前年度に明確な結果を得られなかったが、実験法等の改善点は明確になっているので、次年度に結果を出せるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで糖尿病ラットに対するAPGWamideの効果を調べてきたが、他の神経因性疼痛モデルの1つである坐骨神経圧迫モデルラットを作製し、同様の手法でAPGWamideの抗アロディニア効果効果を調べ、糖尿病ラットと比較検討する(武田)。 APGWamideのC末端アナログペプチド、PGWamide、GWamideの活性の比較から、N末端のアミノ酸残基が活性の強さに影響を与えていると考えられる。そこで、構造活性関係を詳しく調べるために、N末端のアミノ酸残基Alaを他のアミノ酸残基に置換したXPGWamideを作製し、抗アロディニア効果を調べる(池田)。 上位中枢におけるAPGWamideの効果を明らかにするために、正常ラット、糖尿病ラットおよび坐骨神経圧迫ラットにAPGWamideを投与し、c-Fosタンパクの免疫組織化学を行う。24年度の実験をふまえて、APGWamideの投与法、投与経路、実験法の改善等を進めて、上位中枢におけるAPGWamideの作用部位を明らかにする(池田・武田) APGWamideの5-HTやNAを介した抗アロディニア作用は抗うつ薬の薬理作用と似ており、脳内への投与でも抗うつ薬と同様に5-HTの放出量が増えることを確認している。このことから、APGWamideには痛みに対する効果だけでなくうつ病に対しても軽減効果があることが期待できる。そこで、APGWamideを脳室内に投与し、行動実験から抗うつ効果を調べる。(武田) APGWamideは本来軟体動物から単離されたペプチドであり、哺乳類に効果があるということは哺乳類にも同様な効果を持つ未発見の神経ペプチドが存在する可能性が高い。神経因性疼痛の行動実験をアッセイ系にしてラットの神経系からAPGWamideと同様の活性を持った神経ペプチドの探索を試みる。(池田)
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は例年よりも実験動物(ラット)を多く使用する予定だったので、前年から70千円程繰り越した。使用予定金額としてはラット購入に270千円、レセプターアンタゴニスト等の薬品類に200千円、免疫組織化学用のキット等の試薬類に100千円、実験器具等の消耗品に200千円、APGWamideアナログペプチドの合成に200千円、学会発表等の旅費に100千円論文投稿費に100千円を予定している。
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