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2012 年度 実施状況報告書

幼若期ドーパミン神経系傷害が成熟後の痛覚機構におよぼす影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23590721
研究機関北里大学

研究代表者

緒形 雅則  北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20194425)

研究分担者 秋田 久直  北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70118777)
野田 和子  北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60050704)
キーワード幼若期ドーパミン神経系傷害 / 痛み / 痛覚過敏 / 不安・情動行動
研究概要

本年度は幼若期ドーパミン(DA)神経系傷害動物を用いて以下の実験を行った。
1、行動解析
(1)ホルマリン試験によるメタンフェタミン(MAP)の炎症性疼痛への影響:対照群に対するMAP(1mg/kg, 2mg/kg, 4mg/kg)の腹腔内投与は、ホルマリン誘発性の痛覚関連行動を用量依存的に抑制した。また1mg/kgのMAP処置はホルマリン注入後早期に現れる痛覚関連行動のみに抑制効果を及ぼしたが、4mg/kgのMAP処置は全観察期間における痛覚関連行動を抑制した。一方、幼若期DA神経系傷害動物では、4mg/kgのMAP処置でも全観察期間の痛覚関連行動に変化はなく、幼若期DA神経系傷害動物が示す痛覚過敏反応は残存していた。(2)明暗箱試験:前年度の明暗箱試験の結果では、対照群とDA神経系傷害群の間に有意な差は認められなかったが、今年度は明箱の照度を変えた2条件の明暗箱試験(90Luxの明箱と暗箱、10Luxの明箱と暗箱)を用い詳細な検討を行った。照度の異なる明箱間での行動を比較した結果、対照群では、暗い明箱での滞在時間が有意に長いのに対し、DA神経系傷害動物では明るい明箱での滞在時間と単位時間当たりの行動量の有意な増加が観察された。(3)高架式十字迷路:高架式十字迷路では、オープンアーム侵入回数とオープンアーム滞在時間に幼若期DA神経系傷害に伴う顕著な影響は認められなかった。
2、免疫組織化学染色:DA神経細胞の顕著な減少と、青斑核ノルアドレナリン神経細胞の無傷が確認された。また背側縫線核のセロトニン神経細胞の分布にDA神経系傷害に伴う影響は認められなかった。
以上の結果より、幼若期DA神経系傷害は体性感覚刺激のみでなく強い光刺激に対しても異常行動をもたらすことが示めされた。そしてその異常行動の背景にある機序が単一でない可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

交付申請書と昨年度の実施状況報告書に記載したごとく、今年度は行動解析として、①メタンフェタミンの用量とホルマリン試験の関連、②高架式十字迷路、③条件づけ場所嫌悪試験を行う予定であった。前記①と②の行動実験に関しては十分な結果が得られた。一方、条件づけ場所嫌悪試験に関しては、予備試験と数例の本試験を行ったが十分な結果を得るには至らなかった。その理由として、前年度に引き続き行った明暗箱試験の詳細な検討によって、幼若期DA神経系傷害動物が明るい環境下で異常行動を示すことが明らかとなったことがあげられる。このことは条件づけ場所嫌悪試験において環境照度の設定が重要であることを意味している。よって、今年度は明暗箱試験に重点を置き優先して実験を行ったため条件づけ場所嫌悪試験の十分なデータを得るに至らなかった。よって次年度は今年度の明暗箱試験の結果を十分勘案し、条件づけ場所嫌悪試験を行っていく予定である。
またホルマリン注入による脳・脊髄内のc-Fos蛋白の発現に対する免疫組織化学染色においては、抗体の選定に時間を費やしたため、対照動物の脊髄内のc-Fos蛋白発現に関するデータは得られたものの、処置動物に対しては次年度に行うこととなった。

今後の研究の推進方策

H25年度は、H24年度に十分な結果が得られなかった場所条件づけ嫌悪試験とホルマリン誘発性のc-Fos蛋白の脳・脊髄内発現解析をはじめに着手する。その後c-Fos蛋白発現実験の結果をもとに、以下の実験を行う。幼若期ドーパミン神経系傷害にともないc-Fos蛋白の発現に変化が観察された場合は、その発現変化の背景にある、痛み感覚情報処理回路を同定するために逆行性トレーサー注入実験、さらに脳領域の詳細な同定のために、神経伝達物質等との二重免疫組織化学染色を行う。また、c-Fos蛋白の発現変化が観察された脳領域が、ドーパミン神経系の直接投射領域である場合は、生後5日目に当該領域に6-OHDAを局所注入し、幼若期ドーパミン神経系局所破壊が成熟後の炎症性痛覚行動に与える影響を調べる。一方、幼若期ドーパミン神経系傷害がc-Fos蛋白の発現に影響を与えなかった場合は、痛覚抑制系と痛み・不安等の情動的側面に関与する神経伝達物質ならびにその受容体等を対象とした免疫組織化学染色を行う。また、免疫組織化学染色により変化が観察された神経伝達物質関連蛋白ならびに神経可塑性関連物質(CREB、ERK1/2)を対象としたウエスタンブロット解析を行い、定量的評価をする。

次年度の研究費の使用計画

H24年度の成果発表を国際疼痛学会と日本生理学会大会で行った。当助成金からの支出により生理学会での発表を行ったが、開催時期が3月末となり支出の取り扱いが次年度となったこと、さらに、高架式十字迷路の購入価格が僅かではあるが予定額より安かったこと等により次年度使用額が生じた。
H25年度の研究費の使用は、実験計画からその支出の多くは試薬代、実験用器具代、動物代である。特に、免疫組織化学染色、ウエスタンプロット、トレーサー実験に使われる抗体・試薬代の割合が多くなると思われる。また旅費はH25年度に開催される北米神経科学会あるいは日本生理学会での発表に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Neonatal dopamine depletion-induced hyperalgesia in the adulthood was not reversed by methamphetamine

    • 著者名/発表者名
      Masanori Ogata
    • 学会等名
      14th World Congress on Pain
    • 発表場所
      Milan, Italy
  • [学会発表] 幼若期ドーパミン神経系傷害ラットの成熟後における機械、熱、化学刺激に対する侵害受容性行動反応

    • 著者名/発表者名
      緒形 雅則
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2014-07-24  

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