研究課題/領域番号 |
23590722
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
川上 順子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40075601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | dopamine / cingulate cortex / pain / LTD |
研究概要 |
<目的>前頭前野帯状回の活動は、情動やattentionにより影響される自覚的な痛みの強さを反映することが、ヒトの脳画像解析で知られています。また、情動の中枢である扁桃核からは帯状回へ直接の投射があり、この投射が、帯状回の神経細胞の活動に影響を与える事が報告されている。そこで、帯状回で記録される侵害受容細胞の活動が扁桃核からの入力でどのように変化するのかを解析し、さらに、帯状回における精神活動に深く関わるドパミンが帯状回の痛み反応に与える影響を検討した。<結果>帯状回で記録された、末梢の痛み刺激に反応する細胞活動は、扁桃核への電気刺激により長期時間にわたり抑制された。この抑制現象はNMDA受容体阻害薬および代謝型グルタミン酸受容体阻害薬により抑制されることから、シナプスにおける長期抑制(LTD)のメカニズムが関与していることが示唆された。さらに、このLTD誘発へのドパミンの作用を観察する目的で、ドパミン受容体D2阻害剤を帯状回局所に微量投与すると、扁桃核刺激により誘発されるLTDの発生を抑制する結果が得られた。<結論>自覚的な痛みの強さの中枢である帯状回では、扁桃核からの入力が侵害受容細胞の活動を長期に抑制するが、その抑制にはドパミンD2受容体活性が必要である事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究の前半を終了し、論文を投稿し、BMC Neuroscience highly accessesの評価を受けた(BMC Neuroscience 2011 12)。次の実験も順調に進展しており、今年度には論文を投稿予定。
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今後の研究の推進方策 |
【目 的】 本年度は、ラットにおいて、内因性のドパミン濃度の変化が、末梢組織の痛み刺激に反応する前頭前野侵害受容ニューロンの活動をどのように修飾するか解析する。【方法】ウレタン麻酔下のオス成熟ラット尾部への機械的刺激(500g圧刺激)によって誘発されるPFC侵害受容ニューロン活動を前頭前野に挿入した電極で細胞外記録法にて記録し、中脳腹側被蓋野(VTA)への高頻度刺激(50Hz,250μA,30秒間)はPFCのドパミン濃度を増加させるという報告(Gurden,1999)を参考にして、高頻度刺激前後の侵害刺激応答を解析する。次に、VTA高頻度刺激前にPFCにドパミンD2受容体阻害薬を微量注入して、侵害受容応答の抑制への影響を観察する。さらに、PFCドパミン濃度減少の影響を見るために、VTAへκ-opiate agonistを微量注入し(Malgolis,2006)した場合と、6-hydroxydopamineを使用したPFCドパミン枯渇実験において、PFCドパミン濃度の低下による侵害刺激応答の変化を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ドパミン受容体阻害薬を始めとし、各種薬品、動物、電極、ニューロトレーサー等の実験に必要な消耗品に使用する。さらに、今年度後半には論文投稿をする予定であるので、論文投稿料、英文校閲料を申請する。
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