研究課題/領域番号 |
23590725
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
末冨 勝敏 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員研究員 (70235836)
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研究分担者 |
西原 真理 愛知医科大学, 医学部, 講師 (60380325)
井上 真輔 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80403905)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 瘢痕 / 疼痛 / マクロファージ / コラーゲン繊維 / CGRP / ED-1 / α-SMA |
研究概要 |
末梢組織に創傷を与えた後に、損傷部とその周縁組織における炎症反応の沈静化と瘢痕形成の程度を評価するため、手術後1、4、7、10、14、21、28日目の損傷皮膚局所の組織切片を作製し、マクロファージ(ED-1)、筋線維芽細胞(α-SMA)、痛み関連ペプチド(CGRP)それぞれに対するマーカー抗体を用い免疫組織染色を行った。組織の損傷並びに瘢痕の有無や程度は、HE染色ならびにMT染色法で判定した。痛みについては、本モデル動物の瘢痕側と非瘢痕側への機械的痛み刺激に対する痛み行動から痛み閾値を測定し、比較検討した。 マクロファージは1~7日目において損傷部(真皮内或いは真皮深部)に多数集積し、その後、数は減少するものの14日目にも残存していた。筋線維芽細胞は、その集積が処置後7日目に真皮深部において認められた。CGRPの発現は、1~7日目に瘢痕側で特に表皮全層に強く発現し、真皮乳頭から表皮に伸びるCGRP陽性線維も認められた。10日目以降、その発現は両側共に徐々に減弱し、その違いも小さくなったが、21日目には両側とも14日目より逆に上昇した。さらに7日目には、真皮深部において上記3種の指標が共局在化し、大型の楕円形の核を持つ細胞集団がコラーゲン線維間に認められた。10日目には、密に走行したコラーゲン線維間に線維芽細胞が認められた。また、損傷後の全ての時点で瘢痕側において痛み閾値の低下が認められた。以上の結果から、損傷後7日目頃に瘢痕形成が始まり、その後も持続する瘢痕性疼痛にマクロファージの残存が関与していることが予測された。したがって、損傷部の治癒を妨げない程度に、マクロファージの集積を抑え、適度な組織修復を促すことが瘢痕性疼痛のの抑制につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット後肢足底における痛みを長期間持続させるため、足底内部の広範囲に創傷を与えて瘢痕を作製した。ところが、目視で主要な瘢痕部位を特定することが困難であったため、足底全般に渡って連続的に組織切片を作製し、膨大な数の免疫染色を行わざるを得なかった。組織切片のサイズ自体も大きくせざるを得なかったため、組織切片標本の作製にも時間を要し、さらに免疫染色時にスライドガラス上での標本の剥離、よじれ並びに破損が起こりやすく、顕微鏡で観察可能な標本の作製に労を費やしてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は痛みを慢性化(固定化)させる遺伝子・タンパク質の発現メカニズムについて調べる。本年度の結果を結果から、ラット足底施術後1週間後に痛み域値の低下が最大となり、この痛覚過敏状態が12週間後まで持続することが分かったので、術後3-4日を痛みの急性期、10-14日を慢性期として、末梢組織、後根神経節、脊髄後角をサンプリングしてRNA、ペプチド・タンパク質画分を調製し、炎症持続関連、組織修復関連、痛覚関連分子の遺伝子発現レベルの変動や翻訳後修飾パターンの変化を、リアルタイムPCR、免疫ブロッティング、質量分析法で解析する。並行して、マイクロアレイによる網羅的発現解析を行い、瘢痕形成に伴う発現レベル変動パターンが類似した遺伝子群を検索する。また、遺伝子発現パターンを包括的に変化させるヒストンメチル化パターンについては、クロマチン免疫沈降とPCRで検証する。タンパク質レベルでは質量分析法によりチャネル分子のリン酸化・脱リン酸化レベル変化などを調べ機能変化の可能性を探るこれらのアプローチにより、痛みの慢性化特徴づける生理現象や分子マーカーを特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はラットの末梢組織と脊髄、後根神経節を手術前後で採取し、生化学的解析を行う。これらの標本を大量にストックするために、パナソニック メディカルフリーザーU-339とニホンフリーザー 超低温フリーザーを購入する。
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