研究課題/領域番号 |
23590726
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
芦高 恵美子 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50291802)
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研究分担者 |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ノシスタチン / 痛覚 / ノシスタチン結合タンパク質 / TRPV6 / HSP60 |
研究概要 |
申請者らは、痛覚制御ペプチドとしてノシスタチンを発見し、その結合分子としてノシスタチン結合タンパク質(Nocistatin binding protein 1, NSP1)を同定した。NSP1遺伝子欠損マウスの作製により、NSP1の疼痛制御への関与を認めた。一方、NSP1はTransient receptor potential V6 (TRPV6)と複合体を形成し、その細胞内へのCa2+透過性を抑制した。さらに、NSP1結合分子として分子シャペロンHSP60を同定した。本研究では、TRPV6、NSP1、HSP60 による(1)機能的相互作用、(2)タンパク質の品質管理、(3)疼痛制御への関与に焦点をあて、膜タンパク質の品質管理に基づく疼痛制御機構を解明する。本年度は、TRPV6、NSP1、HSP60の相互作用の関係とTRPV6の疼痛への関与に焦点を絞り解析を行い以下の知見を得た。1.NSP1とHSP60との相互作用には細胞特異性が認められた。腎臓由来Cos7細胞ではNSP1とHSP60との相互作用が認められたが、神経系株細胞NG108-15、N115、PC12細胞では認められなかった。GST融合NSP1を用いたマウス脊髄シナプス膜可溶化画分からの精製においても相互作用は認めなかった。また、免疫染色により、Cos7細胞に発現させたNSP1とHSP60の共存はミトコンドリアで生じていた。一方、NSP1とTRPV6はミトコンドリアと細胞膜に共存していた。2.腎臓や小腸に発現する末梢型TRPV6の他に、脳や脊髄に特異的に発現するTRPV6スプライスバリアント(中枢型TRPV6)の存在を明らかにした。神経因性疼痛や炎症性疼痛に伴い中枢型TRPV6の発現が上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)NSP1の膜型コシャペロンとしての機能、(2)TRPV6-NSP1-HSP60の相互作用と局在、(3)TRPV6の疼痛への関与について実験を計画した。 (1)に関しては、少し遅れているが、(2)と(3)に関しては、おおむね順調に進展している。以下に、それぞれの達成度を記す。(1)NSP1が大腸菌でのタンパク質発現系において凝集体となり、その可溶化の条件検討の段階である。GFPを用いたシャペロン活性測定の条件を検討した。(2)NSP1とHSP60、NSP1とTRPV6の相互作用の細胞特異性、細胞小器官の同定を行った。(3) TRPV6の中枢神経系の発現と局在を明らかにした。また、炎症性疼痛や神経因性疼痛モデルを作製し、Real-time RT-PCRによりTRPV6のmRNA発現変化を解析した。TRPV6アンチセンスRNAを設計し、マウスへの投与実験を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(1)NSP1の膜型コシャペロンとしてのHSP60のシャペロン活性制御、 (2)TRPV6-NSP1-HSP60の相互作用によるTRPV6のフォールディング、翻訳後修飾、膜輸送、多量体形成やCa2+透過性への影響、(3)疼痛モデルマウスにおけるTRPV6-NSP1-HSP60の相互作用の変動と疼痛の発症や持続性との関連に焦点をあて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)NSP1の膜型コシャペロンとしての機能:天然構造のみで蛍光を発する緑色蛍光タンパク質GFPを酸変性したのち希釈し、NSP1およびHSP60タンパク質を添加することによりフォールディングに伴うGFPの発光を蛍光分光光度計で測定する。(2)TRPV6の疼痛への関与:TRPV6アンチセンスRNAを投与による疼痛への影響を検討する。(3)NSP1-HSP60の相互作用によるTRPV6の品質管理:TRPV6の翻訳後修飾:NSP1やHSP60とTRPV6の発現細胞系、shRNAを用いた抑制系細胞において、TRPV6のタンパク質の切断による構造上の変化やリン酸化、糖鎖修飾などの翻訳後修飾について解析を行う。多量体形成:Blue-native PAGEにより、NSP1とHSP60の相互作用によるTRPV6の多量体形成を検討する。Ca2+透過性:NSP1-HSP60-TRPV6の相互作用とTRPV6のCa2+透過性との関係を、共発現細胞系、shRNA を用いた発現抑制細胞系、修飾部位や結合部位の欠損やドミナントネガティブ変異体の発現細胞系、NSP1遺伝子欠損マウスより調製した初代神経培養細胞において、電気生理学的解析により検討する。
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