研究課題/領域番号 |
23590729
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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研究分担者 |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 助手 (90510123)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イオンチャネル / カルシウム / プロテインキナーゼA / 疼痛制御 |
研究概要 |
本年度は、NG108-15細胞およびCav3.2発現HEK293細胞を用いた電気生理・生化学実験と、ラットおよびマウスを用いた行動薬理学的疼痛検定実験を中心に行った。 1)NG108-15細胞における検討:Cav3.2を豊富に発現するNG108-15細胞において、パッチクランプ法によってT型カルシウムチャネル電流を測定し、プロスタグランジンE2および膜透過型cAMPアナログであるジブチリルcAMP(db-cAMP)の添加によってT型カルシウムチャネル電流が増強されることを証明した。また、この効果はA-kinase-anchoring protein (AKAP)の阻害物質(AKAPI)によって抑制されるとの結果が得られた。また、免疫沈降によってAKAPとCav3.2が分子複合体を形成していることを示す知見も得られた。 2)HEK293細胞における検討:Cav3.2を安定的に発現するHEK293細胞のクローン化に成功したので、これを用いてdb-cAMPなので効果を検討するための予備実験を完了した。 3)共焦点レーザー顕微鏡を用いた検討:NG108-15細胞およびHEK293細胞のCav3.2、AKAP、硫化水素合成酵素の1つであるシスタチオニン-γ-リアーゼの細胞内分布を調べるための基礎実験を完了した。 4)ラットおよびマウスにおける検討:ラットの足底内へプロスタグランジンE2あるいはdb-cAMPを投与することによって機械的痛覚過敏を検出し、これらの効果がAKAPIあるいはT型カルシウムチャネル阻害薬により抑制されるとの知見を得た。また、同様の検討をマウスでも進めている。 以上、本年度は当初の計画どおりに進まなかった部分もあるが、今後の検討を行うための基礎的データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、今年度は、そのもっとも基本部分であるプロテインキナーゼA系によるCav3.2 T型カルシウムチャネル機能の増強が実際におこることを電気生理学的に証明することできたほか、in vivo実験系においてプロスタグランジンE2/cAMP/プロテインキナーゼA経路の活性化によっておこる痛覚過敏にT型カルシウムチャネルが関与することも明らかにすることができた。 一部、達成できなかった部分に関しては、今後、再検討を行うか、あるいはこれまで得られた知見に基づいて、方向転換も含めて検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見に基づいて、当初の研究目的を達成するために若干の方向転換も検討しながら下記の方策により研究を推進していきたい。 1)マウスにおける検討:ラットにおいてプロスタグランジンE2/EP4受容体系を介するプロテインキナーゼ活性化によってCav3.2 T型カルシウムチャネルの活性化がおこり、その結果、機械的痛覚過敏がおこることがこれまでの研究により明らかとなった。しかし、マウスにおけるプロスタグランジンE2誘起痛覚過敏のメカニズムは、ラットとは異なりEP4受容体の関与は少ないとの知見もある。そこで、マウスにおけるプロスタグランジンE2誘起痛覚過敏におけるCav3.2 T型カルシウムチャネルの役割を検討するほか、関与するEP受容体のタイプ、さらにその下流シグナルとしてのプロテインキナーゼCとプロテインキナーゼAの関与を調べる。 2)プロテインキナーゼAやプロテインキナーゼCによってリン酸化されたCav3.2 T型カルシウムの脱リン酸にカルシニューリンが関与するか否かをラットおよびマウスを用いたin vivo 実験で検討するほか、細胞培養系においても電気生理学的あるいは生化学的手法を用いて検討する。 3)プロテインキナーゼAやプロテインキナーゼCの活性化によってCav3.2の細胞内局在に変化が見られるか否かを共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
6年制薬学教育が完成した現在、4年時のCBT, OSCE、5年時の実務実習などのスケジュールの都合で、研究を推進する上で最も重要な2011年12月~2012年3月の間に学生が少なく、2012年4月以降に多数の学生が研究を行うことになった。このため2011年度中に予定した研究を推進することができず、2012年4月以降に予定していた研究をおこなう必要が生じたものである。よって、「次年度使用額」は、2012年4月~6月の間に使用する予定で、翌年度の研究費は7月以降に使用する計画を立てている。現在の6年制薬学部の教育プログラムでは、4月~8月の間にもっとも多くの研究費が必要となるので、この期間にかなりの研究費の支出が見込まれる。
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