研究課題/領域番号 |
23590729
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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研究分担者 |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 助手 (90510123)
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キーワード | イオンチャネル / カルシウム / プロテインキナーゼA / 疼痛制御 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続いて、マウス・ラットのDRG細胞、NG108-15細胞、ND7/23細胞およびCav3.2発現HEK293細胞を用いた電気生理・生化学実験と、ラット・マウスを用いた行動薬理学的検討を行った。 1)神経障害性疼痛の発症には傷害された神経軸索の再生時の誤入力などが原因になることも知られているため、NG108-15細胞、ND7/23細胞およびDRG細胞における神経突起伸長へのPKA/T型カルシウムチャネル系の役割を検討した。その結果、PKA活性化により神経突起伸長が認められ、これらはT型カルシウムチャネル阻害薬によって抑制されることが明らかとなった。また、PKA活性化によりによりT型カルシウムチャネルを介する膜電流が持続的に増強されることを見出した。2)NG108-15細胞およびCav3.2発現HEK293細胞において、AKAP79/150、Cav3.2 T型カルシウムチャネルおよびカルシニューリンが複合体を形成しているか否か、あるいはカルシニューリン阻害薬がPKAによるCav3.2リン酸化を促進するか否かを検討するための予備実験が完了した。3)PKAおよびPKC活性化によってCav3.2の細胞内局在が変化するか否かを検討するための基礎実験をNG108-15細胞およびCav3.2発現HEK293細胞を用いて行った。4)マウスの足底内に投与したPGE2によって誘起される痛覚過敏のメカニズムを検討し、EP2受容体/cAMP/PKA系とEP1受容体/PKC系を介するCav3.2の活性化が重要な役割をはたしていることを示唆する知見が得られた。 以上より、Cav3.2 T型カルシウムチャネルは、EP2受容体/cAMP/PKA系とEP1受容体/PKC系よって促進的制御を受けることで、痛覚過敏の発現に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に計画した研究のうち、マウスにおけてPGE2により誘起される痛覚過敏にEP2受容体/cAMP/PKA系とEP1受容体/PKC系によるT型カルシウムチャネル活性化が関与するとの知見が得られた。また、NG108-15やHEK293細胞で行ったCav3.2のPKAおよびPKCによるリン酸化と、それに及ぼすカルシニューリンの関与を検討するための実験については、抗体の特異性の問題があって投与の計画通りには進まなかったが、予備検討はおおむね完了したので、平成25年度に本格的な検討を行いたい。また、免疫染色によるCav3.2の細胞内局在の検討も技術的な問題があって結論を得ることができなかったので、引き続き検討を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見と予備検討の結果に基づいて、当初の研究目的を達成するために少し方向転換しながら下記の方策によって研究を推進していきたい。 1)マウスにおける検討:マウスにおいて、PGE2がEP2受容体/cAMP/PKA系とEP1受容体/PKC系するCav3.2 T型カルシウムチャネル活性化を介して痛覚過敏を誘起することがこれまでの検討により示唆されたことより、今後は、カルシニューリン阻害薬との併用実験を行い、Cav3.2のリン酸化・脱リン酸による機能制御と疼痛情報伝達制御の関係についてさらに詳細な検討を進めていきたい。一方、知覚神経では、カルシニューリンの標的となる蛋白として2ポアドメインカリウムチャネルの一種であるTRESKが知られている。このチャネルはリン酸化により閉口し、脱リン酸化により開口することが報告されており、この脱リン酸にはカルシニューリンが関与するとの証拠が得られている。そこで、カルシニューリン阻害薬が疼痛制御にどのように影響を及ぼすかをマウスで検討し、Cav3.2とTRESKのリン酸化促進が果たす役割を解析する。 2)NG108-15細胞、ND7/23細胞およびCav3.2発現HEK293において、免疫沈降法および電気生理学的手法を用いて、PKA, PKC, Cav3.2, TRESK, AKAP, カルシニューリンの複合体形成やリン酸化・脱リン酸化メカニズムをさらに検討する。 3)NG108-15細胞、ND7/23細胞およびDRG細胞におけるPKAによる神経突起伸長におけるCav3.2、TRESKおよびカルシニューリンの役割をさらに検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度同様、6年制薬学教育カリキュラムでは、実務実習、CBT、OSCEなどの都合で、研究を行う時期が3月~6月に集中してしまう傾向があるため、平成24年度の交付金の一部を「次年度使用額」として平成25年に繰り越し、4~6月の間に使用する予定である。なお、平成25年度は、本科研費の最終年度となるので、7月より順次予算執行し、年度内に計画的に使い切る予定である。
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