研究課題/領域番号 |
23590732
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
原西 保典 産業医科大学, 医学部, 助教 (90449942)
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研究分担者 |
原 幸治 産業医科大学, 医学部, 講師 (20331001)
寺田 忠徳 産業医科大学, 医学部, 助教 (10399206)
中村 元洋 産業医科大学, 医学部, 助教 (30461578)
佐多 竹良 産業医科大学, 医学部, 教授 (60128030)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 行動薬理学 / 髄腔内投与 / 脳室内投与 |
研究概要 |
神経障害性疼痛には現在有効な治療薬が無く慢性疼痛の原因となっており、臨床では新しい治療薬の開発が強く望まれている。ATP感受性カリウムチャネル(KATP)が活性化すると神経細胞の興奮性は低下する。中枢神経系でKATP開口薬はシナプス前膜で主要な疼痛伝達物質であるグルタミン酸の遊離を抑制し、シナプス後膜ではNMDA型やAMPA型グルタミン酸受容体の機能を抑制するため、KATP開口薬が抗侵害作用をもつ可能性がある。構造的に異なるKATP開口薬のうち、Kir6.2/SUR1に特異的に作用するdiazoxide、SUR2に特異性が高いpinacidil、Nicorandilの急性痛に対する抗侵害作用の有無を調べた。熱性侵害刺激(ホットプレート試験、テールフリック試験)と機械的侵害刺激(paw pressure試験)を用いた。髄腔内投与を行うため6週齢の正常雄SDラットのクモ膜下腔に大槽からPE-10カテーテルを尾側に挿入した。熱性侵害刺激(ホットプレート試験、テールフリック試験)と機械的侵害刺激(paw pressure試験)に対する各薬物の抗侵害作用の有無を調べた。髄腔内投与により全ての薬物がホットプレート試験とテールフリック試験の両方で反応潜時を短縮した。同様にpaw pressure試験のvocalization(啼泣反応)閾値を低下させた。一方、Nicorandilについては腹腔内投与も併せて行った。その結果、腹腔内投与でも髄腔内投与と同様に全ての試験において反応潜時および閾値を短縮・低下させた。これらはKATP開口薬が急性痛に対して抗侵害作用ではなく反対に痛覚過敏を引き起こすことを示唆している。痛覚過敏となる機序の解明については今後、脳室内への投与やKATP阻害薬のglibenclamide投与による作用を検討することにより行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物の処置や疼痛行動の計測など技術的な面は順調であった。急性痛に対する各薬物の作用が一様に当初予想していた結果と異なったため再現性の確認に同じ実験を何度か繰り返す必要があったため炎症性疼痛に対する実験を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
所属研究機関の設備面や研究者の技術面で研究計画の遂行に問題はなく方法論に関する変更点はない。初年度に行わなかった炎症性疼痛に対するKATP開口薬の作用を検討したのち、当初の研究計画の通り神経障害性疼痛に対するKATP開口薬の作用について検討する。神経障害性疼痛モデルを作成し発現する熱性痛覚過敏、機械的アロディニア、冷的アロディニアに対する作用を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初申請した研究計画通り神経障害性疼痛モデルを作成してKATP開口薬の抗侵害作用を検討する。対象とする薬物の種類や評価する疼痛行動試験に変更点はなく神経障害性疼痛と引き続き侵害受容性疼痛に対するKATP開口薬の抗侵害作用・作用部位の解明および副作用に関連して運動協調機能に対する作用を検討する。
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