研究課題
1.目的:抗がん剤曝露と健康影響との関連を明らかにするためには、抗がん剤が実際に看護師の体内に取り込まれていることを実証することが必要である。本研究では抗がん剤治療中の患者を看護している看護師を対象に、尿中の抗がん剤含有量を測定し、看護師の抗がん剤の曝露状況を検証することを目的とした。2.方法:1)対象:抗がん剤治療中の患者を看護しており研究参加への同意が得られた女性看護師10名。原則として抗がん剤の混合調製を実施していない看護師とした。(2)調査項目:①尿中の抗がん剤の定量:シクロホスファミド(以下CP)と、5-フルオロウラシルの代謝産物であるαフルオロ-βアラニンの定量を行った。②質問紙調査:年齢、抗がん剤治療中の患者への看護内容とその際の防護方法、最近の健康状態(頭痛、めまい、脱毛、皮膚、胃腸、生殖器系症状の有無)③検体採取と分析方法:勤務開始から24時間後まで、排尿の度に全尿を取り、その内の5mlの尿を採尿管(EXPOSURE CONTROL B.V.製)に採取してもらった。検体尿は分析まで-80℃で冷凍保存した。分析:尿検体を冷凍保存のまま空輸し、オランダのEXPOSURE CONTROL研究所においてガスクロマトグラフ質量分析による含有量の分析を実施してもらった。3.倫理的配慮:対象者及び対象者の所属施設長の同意と研究者の所属施設の倫理委員会の承認を得てから実施した。4.結果と考察:CPは9人の看護師の24の尿から検出された。総排泄量は5.4~44.2ng/24hであった。一人あたりの看護師のCP排泄総量の平均は16.8 ng/24hであった。αフルオロβアラニンはいずれの尿サンプルからも検出されなかった。抗がん剤を当日取り扱っていない看護師からもCPが検出されたことから、取り扱いの有無に関わらず抗がん剤に曝露されていることが明らかになった。
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