研究課題/領域番号 |
23590741
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
人見 敏明 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90405275)
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キーワード | Moyamoya病 / 脳血管疾患 / iPS細胞 / 予防医学 / Mysterin |
研究概要 |
日本人に多い脳血管疾患の中で、Moyamoya 病、脳動脈瘤および脳動静脈奇形は遺伝的負荷が強い。特にMoyamoya 病は若年性脳梗塞の原因となるが、その感受性遺伝子は不明であった。我々は、常染色体優性遺伝形式を示す3 世代家系でのPositional Cloning を行い、遺伝子座17q25.3にMoyamoya 病感受性遺伝子として新規タンパクをコードするMysterin を特定した。 本研究では、①Moyamoya 病患者よりiPS 細胞の樹立と血管平滑筋および内皮細胞、マクロファージへの分化②細胞生物学的観察とMysterin の発現解析、③Mysterin と他分子とのcrosstalk について検討することにより、脳血管疾患に共通した脳血管特異的な機能上、構造上の分子メカニズムを解明し、脳血管疾患の新たな予防医療の確立を目指す。 家族性もやもや病患者3名から樹立したもやもや病特異的iPS細胞から内皮細胞へ分化誘導を行い、TRA1-60陰性、Flk1およびVE-cadherin共陽性である細胞をフローサイトメトリーで単離し、血管内皮マーカー(CD31, VE-cadherin, vWF, CD34)の発現をRealtime-PCR、免疫染色法で確認し、得られた細胞が血管内皮細胞として機能していることが分かった。Realtime-PCRにより分化誘導した血管内皮細胞でMysterinの発現をRNAレベルで検討した。今後は、もやもや病非発症者由来のiPS細胞より分化した内皮細胞と比較検討を行い、もやもや病の本態である内頸動脈閉塞に果たす役割の解明が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、3世代にわたる常染色体優性遺伝形式で伝達されている家族性Moyamoya病家系の研究参加者由来のiPS細胞コロニーを樹立し、免疫染色、定量的PCR、胚様体形成、奇形種形成、核型解析、エピゲノム解析、Short tandem repeat解析を行い、得られたコロニーから最適なクローンを選択できた。 得られたMoyamoya病患者由来のiPS細胞クローンから内皮細胞への分化誘導、TRA1-60陰性、Flk1およびVE-cadherin共陽性である細胞をフローサイトメトリーで単離し、血管内皮マーカー(CD31, VE-cadherin, vWF, CD34)の発現をRealtime-PCR、免疫染色法で確認し、得られた細胞が血管内皮細胞として機能していることが分かった。またRealtime-PCRにより分化誘導した血管内皮細胞でMysterinの発現をRNAレベルで遺伝子発現解析を行った。 iPS細胞の樹立ともやもや病の罹患細胞腫である内皮細胞への分化、血管内皮細胞の細胞生物学的観察とMysterinの遺伝子発現解析より、本年度の研究目的に達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で得られたMoyamoya病患者由来の血管内皮細胞を用いて細胞増殖など細胞生物学的な観察を行う。またMoyamoya病患者の血管内皮細胞由来のcDNAを用いたDNAマイクロアレイによって網羅的遺伝子発現の解析を行い、更に、血管新生に関わるシグナル伝達経路を標的として解析し、シグナル伝達の異常からMysterinとcross-talkする分子を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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