研究課題/領域番号 |
23590742
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片山 惠子 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (50304415)
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研究分担者 |
田中 純子 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70155266)
松尾 順子 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70570232)
秋田 智之 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (80609925)
中島 歩 広島大学, 病院, 特任助教 (40448262)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血液透析患者 / 肝炎ウイルス / HBVキャリア / HCVキャリア / 生命予後 / 抗ウイルス療法 |
研究概要 |
これまでに我々は、広島県内の9つの透析施設の協力を得て、全血液透析患者を対象とした肝炎ウイルス感染についての前向き調査を行い、血液透析患者におけるHBVキャリア率およびHCVキャリア率は、供血者集団と比較して高値であること、また、血液透析患者における新規HCV感染発生率は0.33/100人年と、供血者集団と比較して非常に高値であることを明らかにしてきた。血液透析患者は生命予後が不良であるが、肝炎ウイルスに持続感染している血液透析患者について積極的な肝炎治療を実施すべきか否かの基礎的資料を得る目的で、これらの血液透析患者を対象とした2010年時点の予後調査を行い、血液透析患者における肝炎ウイルス感染と生命予後との関連性を明らかにすることを試みた。 肝炎ウイルスに持続感染している血液透析患者の予後が非感染の透析患者と比べて、不良である場合には、積極的に肝炎ウイルス感染に対する抗ウイルス療法を実施する必要があり、本研究の成果により血液透析患者のキャリアに対する治療介入の必要性についての基盤的根拠を得ることができる。 当該年度には、9つの協力医療機関に対して、1999年から2004年に調査を行った3,096例(2010年時点の平均年齢72.4±13.2歳)を対象とした、臨床経過、転帰、死因、肝炎マーカーなどについての予後調査を行った。予後調査の結果、対象者3,096例のうち47.6%が死亡し、肝疾患関連による死亡は肝不全・肝硬変1.9%、肝細胞癌0.9%であった。予後調査結果をひきつづき詳細に解析し、血液透析患者における肝炎ウイルス感染と生命予後との関連性を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、協力医療機関へ対象となる血液透析患者の予後調査を依頼し、調査票を送付して、回答を得られた匿名化データ(肝炎ウイルス検査・肝機能検査・年齢・性別・透析期間・原疾患・糖尿病の有無)について、集計解析することを計画した。当該年度内に協力医療機関から予後調査の回答を得られ、対象とした血液透析患者の透析開始日、臨床経過、転帰、転帰日、死因、肝炎マーカーなどについて集計を行い、対象者の予後の全体像を把握したところである。概ね、計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、引き続き予後調査結果を詳細に解析し、性別、年齢、原疾患等の各交絡因子の調整も行って、肝炎ウイルスに持続感染している血液透析患者と非感染の血液透析患者との生命予後の比較を行う予定である。また、肝炎ウイルス持続感染の血液透析患者については、HBV, HCVのgenotypeについてもそれぞれ検討し、genotypeごとに生命予後との関連が認められるかについて解析を行う予定である。さらに、肝炎ウイルス感染の血液透析患者については、肝硬変・肝細胞癌の発症について詳細に転帰調査を行い、血液透析患者におけるHBVおよびHCVキャリアの肝硬変・肝細胞癌の発生率を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、引き続き血液透析患者における肝炎ウイルス感染と生命予後の解析及び血液透析患者におけるHBVおよびHCVキャリアの生命予後を非キャリアの生命予後と比較する計画である。また、HBVおよびHCVのGenotypeの測定を行い、本研究で得られた生命予後との関連を検討する。HBVのgenotypeはHBV genotype EIAキット(特殊免疫研究所)を用いて測定し、HCVのgenotypeはコア領域の遺伝子配列の違いにより、HCVを I(1a)、II(1b)、III(2a)、IV(2b)、V(3a)型に分類することのできるプライマーを使用し、RT-PCR法を用いて判定するため、試薬の購入を必要とする。
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