研究課題
これまでに我々は県内9つの血液透析施設における肝炎ウイルス感染の前向き調査により血液透析患者におけるB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染率を検討し、供血者集団と比較して感染率が高いことを明らかにしてきた。本研究では、肝炎ウイルスに持続感染している血液透析患者の生命予後を明らかすることを目的として、同コホート集団を対象とした生命予後に関する調査、解析を行った。血液透析患者3,096例を対象とし、2010年12月に対象者の転帰調査を行った。肝炎ウイルスの感染状況は、HBVのみ感染2.2%、HCV のみ感染13.8%、重複感染0.2%、肝炎ウイルス感染陰性78.9%であった。観察期間内での転帰は死亡が48.9%であり、肝炎ウイルス感染状況別の転帰はHCVのみ感染群の死亡率が60.2%であった。累積肝疾患関連死はHBV陽性群で9.7%、HCV陽性群で8.6%であり、血液透析患者集団では一般集団よりもキャリア率が高いにもかかわらず、肝炎関連死は少ないことが示された。一方、生存分析の結果、原疾患が「糖尿病性腎症」あるいは「糖尿病の合併がある」が、生存率の低下と関連していることが明らかとなった。血液透析患者集団において、肝炎ウイルスの持続感染と生存率との関連性は認められず、死因や生命予後に関連する因子の詳細なさらなる検討が必要であることが明らかとなった。実際には血液透析患者においても肝疾患関連死が存在することから生命予後の改善が期待できるかどうか判断の上での積極的な抗ウイルス療法が必要と考えられた。
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