種々の食中毒を同時に簡便(検体を加えるだけで)・迅速(10~20分で分かる)に鑑別診断ができれば、食の安心・安全確保、また早期発見・早期予防・早期治療に役立つことができる。検出法としては、迅速・簡便なイムノクロマト法やマイクロアレイ法が考えられる。ただし、これらの方法を行うには単クローン抗体などの特異的かつ感度のよい抗体が必要であるため、必ずしもあらゆる微生物の検出に使われているわけではない。本研究では食中毒の原因となるウイルスおよび細菌に対する単クローン抗体を作製し、網羅的・体系化することにより、数種の食中毒を一度に、迅速・簡便・安価・多検体鑑別診断可能な検査法を開発することが目的である。 すでに実用化したもの(ノロウイルスのイムノクロマト法)を除き、よりよい単クローン抗体の樹立に取り組み、抗原的解析や抗体の特異性を確認した。 (1)本年度はウエルシュ菌に対する抗体を得ることができ、現在抗原的解析をしている。(2)昨年度作成したサルモネラの鞭毛蛋白に対する抗体およびセレウス菌の持つセレウリドに対する抗体について、その特異性、各種食中毒細菌との交差性について検討した。サルモネラ鞭毛に対する抗体は他の菌とは交差せず、特異性があることが確認できたが、セレウス菌セレウリドに対する抗体は診断に応用的でないことが分かり再度抗体作成を行っている。(3)これまでに作成した病原性大腸菌の持つ易熱性毒素、腸炎ビブリオの持つ耐熱性溶血毒、カンピロバクターの持つ外膜蛋白に対する抗体については網羅的に抗原的解析および特異性を確認した。いずれも他の菌とは交差せず特異性が高いことが分かった。(4)広く交差性を示すサポウイルスに対する抗体が得られ、抗原的解析およびその有用性について臨床材料を用いて調べたが、感度の点で劣っていることが分かった。
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