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2012 年度 実施状況報告書

レア・アース元素の健康影響 -吸入曝露実験による次世代影響-

研究課題

研究課題/領域番号 23590753
研究機関順天堂大学

研究代表者

千葉 百子  順天堂大学, 医学部, 客員教授 (80095819)

研究分担者 篠原 厚子  清泉女子大学, 人文科学研究所, 教授 (90157850)
松川 岳久  順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
キーワードレア・アース / サマリウム / 雌性マウス / 静脈内投与
研究概要

平成23年度はレア・アース元素の雄性生殖器への分布を調べたが、雌に関するデータがほとんど報告されていないことから、平成24年度はサマリウム(Sm)を選び、ICR系雌性マウスへの静脈内投与実験を行った。Smの可溶性塩(SmCl3)の5%グルコース溶液を1または10 mg Sm/kg体重宛単回尾静脈内投与し、翌日(20時間後)および7日後にセボフレン吸入麻酔下で採血後、頸椎脱臼で安楽死させ、5%グルコースで肝臓を灌流した。摘出した臓器の一部を、硝酸と過酸化水素を用いて閉鎖系で分解し、ICP-MSでSm濃度を測定した。
Sm濃度は脾臓と肝臓で高く、腎臓はこれらに比べて低濃度であった。肝臓中Sm濃度は、10 mg/kg群の濃度は1 mg/kg群のほぼ10倍であり、Control群は検出限界かそれ以下であった。投与後、1週間経過すると濃度は投与翌日の71~76%に低下した。脾臓のSm濃度は、10 mg/kg群は1mg/kg群の20~40倍高く、投与量によって分布しやすさが異なることを示した。投与後、1週間経過しても濃度はほとんど低下むしろ増加傾向にあった。腎臓濃度は肝臓や脾臓に比べると1~2桁低かった。肝臓のSm分布は、同条件で投与した雄性マウスとほぼ同じであったが、脾臓中濃度は雄性>雌性マウス、腎臓中濃度は逆に雌性<雌性マウスであり、臓器分布に雌雄差がある可能性が示された。雌性生殖器である子宮と卵巣には、腎臓とほぼ同程度のSmが検出された。10 mg/kg群の子宮のSm濃度は1mg/kg群の20~40倍、卵巣では約10倍であった。子宮のSm濃度は1週間経過すると半減するのに対し、卵巣は1週間経過しても大きく変化しないことから、比較的長くSmが留まることがわかった。
以上のことから、雌性マウスに静脈内投与されたSmは妊娠・出産・哺乳を通して次世代に影響する可能性が考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

雌性マウスにおけるレア・アースの挙動を検討するために、サマリウム(Sm)の単回静脈内投与実験を、投与量条件と投与後の経過時間を変えて行った。肝臓、腎臓、脾臓、子宮、卵巣のSm濃度を分析し、同条件で投与した雄性マウスにおける分布と比較し、また、雌性生殖器へ低濃度ながら分布することが確認できた。

今後の研究の推進方策

今後、次世代影響検討のために妊娠マウスへのSm投与実験を行い胎児や仔マウスへの影響を検討する予定である。今年度は、妊娠10日目に、雌性マウスへの投与実験と同一の条件でSmを静脈内投与し、投与元素の胎児、出生する仔マウスへの移行の有無と程度を検討する予定である。平成24年度に投与実験を行った雌性マウスについては、さらに骨や肺についても分析を行い、雄性マウスと比較して、体内に取り込んだレア・アースの挙動の雌雄差を検討する予定である。

次年度の研究費の使用計画

妊娠マウス、ならびにこれらから生まれた仔マウスの飼育費用が通常のマウスに比べて高額となるため、主にこれらの飼育に用いる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 吸入曝露した希土類元素のマウス肺への沈着と他臓器への移行2012

    • 著者名/発表者名
      篠原厚子, 千葉百子, 松川岳久, 熊坂利夫, 横山和仁
    • 学会等名
      第3回メタロミクス研究フォーラム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120830-31
  • [学会発表] Depositon of inhaled rare earth elements in lung and other organs of mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Shinohara A., Matsukawa T., Kumasaka T., Chiba M.,Yokoyama K
    • 学会等名
      2012 Asia-Pacific Winter Conference on Plasma Spectrochemistry
    • 発表場所
      Jeju-do
    • 年月日
      20120826-20120829
  • [学会発表] 微量元素研究-分析中毒学の観点から2012

    • 著者名/発表者名
      千葉百子
    • 学会等名
      第23回日本微量元素学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120705-20120706
    • 招待講演
  • [学会発表] 吸入曝露したレアアースの体内挙動に及ぼす粒子サイズの影響2012

    • 著者名/発表者名
      篠原厚子, 松川岳久, 千葉百子, 横山和仁,熊坂利夫
    • 学会等名
      第85回日本産業衛生学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120530-20120602
  • [学会発表] 吸入曝露したセリウムとユーロピウムの肺内動態と骨への移行2012

    • 著者名/発表者名
      篠原厚子, 松川岳久, 熊坂利夫, 佐藤次男, 千葉百子,横山和仁
    • 学会等名
      第29回希土類討論会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120515-20120516

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公開日: 2014-07-24  

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