研究課題/領域番号 |
23590758
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
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研究分担者 |
山内 博 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
網中 雅仁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30231997)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アスベスト / 無害化 / 鉄 / シリカ |
研究概要 |
アモサイト(AM)は1000℃以上での焼成処理により酸化鉄(ヘマタイト(HM)とマグネタイト(MT))、結晶質シリカ(クリストバライト(CB)とトリジマイト(TR))から成る複合体が生成され、その構成比率は焼成条件により異なる。本研究では、AMの焼成無害化処理品に含まれる鉄とシリカによる酸化ストレス、炎症作用を評価するため、マウスマクロファージ系培養細胞(J774A.1細胞)にAM、AMの1000~1400℃焼成処理品、酸化鉄、結晶質シリカ試料を各々曝露し、24時間後の細胞内活性酸素種の定量、培養上清中のTNF-α等のサイトカイン濃度の測定等を行った。AMの1000℃処理試料(AM1000)では24時間曝露後の細胞内活性酸素種生成量及び培養上清中TNF-α濃度が顕著に増加していた。しかし、1200℃、1400℃処理試料では細胞内活性酸素種レベル及び培養上清中TNF-α濃度に顕著な変化は認められなかった。さらに、AM1000の繊維形状を粉砕処理したAM1000Gでは細胞内活性酸素種の生成および培養上清中TNF-α濃度の顕著な変化は認められず毒性が軽減していた。一方、HM, MT, CB, TRについては、24時間曝露後の細胞内活性酸素種レベル及び培養上清中のTNF-α濃度に有意な変化は認められなかった。以上の結果から、細胞への毒性は、試料の結晶構造よりも繊維形状の残存が大きく影響する可能性が示唆された。また、各試料のラット気管内投与後の急性呼吸器影響について病理組織学的検索及び気管支肺胞洗浄液の炎症細胞数、炎症関連生化学指標、TNF-α等のサイトカインの定量的評価を実施した結果、AM焼成試料の急性影響には細胞毒性試験の結果と同様に、焼成試料の繊維形状が影響することが示唆された。しかし、慢性影響には焼成試料の結晶構造が影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AMの1000~1400℃処理試料について、形状及び酸化鉄、結晶質シリカの結晶構造に注目して細胞毒性を比較した結果、各試料の酸化ストレスや炎症作用はラット気管内投与実験での急性影響と同様な結果であり、平成23年度の研究計画よりも進展し、AMの無害化処理の要件を予測できる結果が得られた。さらにラット気管内投与実験では次年度まで継続して生体影響の経時的観察を開始したところ、慢性影響は急性影響と異なり、焼成試料の新たな結晶構造が影響する可能性が示唆され、23年度計画よりも進展した成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、平成23年度に継続して、AMとその焼成処理品、酸化鉄、結晶質シリカについて、マクロファージ以外の上皮系の培養細胞での実験及びラット気管内投与実験による長期観察を行い、被験物質により誘導される酸化ストレスや炎症作用についてバイオマーカー等を分析評価する。さらに、AM焼成処理品の生体影響における酸化鉄と結晶質シリカの複合物の影響の解明するため、同様な系で細胞実験や動物実験を行い、これまでの研究成果をもとに注目される酸化ストレスや炎症関連のバイオマーカーについて遺伝子発現レベルの解析等も行う。3年間の研究成果を総合的に解析し、AMの安全な無害化処理品の要件に関する科学的根拠を蓄積し、アスベストの安全な無害化処理技術の開発における基礎資料として成果の公表し、研究目的の達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究でAM焼成処理品の生体影響に関する新たな知見が得られため、気管内投与実験で平成23年度中に解剖予定だった動物の経過観察期間を延長することとし、病理標本作製や酸化ストレス、炎症関連バイオマーカーの測定にかかる費用の一部を平成24年度の早期に使用することとした。平成24年度は平成23年度に継続して、AM焼成処理品の慢性影響における酸化鉄と結晶質シリカの作用の解明のための細胞実験や動物実験費用として使用する。さらにこれまでの研究成果によりAM焼成処理品の酸化ストレスや炎症に関連することが明らかとなったバイオマーカーについて、その発現に関連する遺伝子発現解析を行う試薬等の購入の費用として使用する。
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