研究課題/領域番号 |
23590758
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
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研究分担者 |
山内 博 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
網中 雅仁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30231997)
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キーワード | アスベスト / 無害化 / 鉄 / シリカ |
研究概要 |
アモサイト(AM)は1000℃以上での焼成処理により酸化鉄(ヘマタイト(HM)とマグネタイト(MT))、結晶質シリカ(クリストバライト(CB)とトリジマイト(TR))から成る複合体が生成され、その構成比率は焼成条件により異なる。本研究では、AMの焼成無害化処理品に含まれる鉄とシリカによる酸化ストレス、炎症作用を評価するため、ラットにAM、AMの1000~1400℃焼成処理品、酸化鉄、結晶質シリカ試料を気管内投与後180日目までの呼吸器影響を病理組織学的検索及び気管支肺胞洗浄液の炎症細胞数、炎症関連生化学指標、TNF-α等のサイトカインの測定による定量的評価を実施した。 AMの1000℃処理試料(AM1000)では投与後早期から肺の炎症反応が認められ、投与後30日目以降に肉芽腫周囲の線維化も認められた。しかし、AM1000の繊維形状を粉砕処理したAM1000Gでは、肺の炎症反応は軽度で回復も早く、毒性の軽減が認められた。一方、AMの1200℃、1400℃処理試料(AM1200、AM1400)では、肺の炎症反応は投与後30日目にかけて進展し、その後も持続した。AM1200では肉芽腫形成とその周囲の線維化も認められた。また、AM1200の繊維形状を粉砕処理したAM1200G では、肺の急性炎症反応は軽度であったが、投与後180日目に炎症が顕著となり、粉砕処理による毒性軽減は急性影響に対する限定的な効果であった。 AMの焼成試料の結晶構成成分のうち、HM、TRによる肺の炎症反応は一過性で回復傾向を示したのに対し、CB、TRによる肺の炎症反応は経時的に進展する傾向が認められた。AMの1200℃以上の焼成処理では酸化鉄に加えて結晶質シリカが生成されており、AM焼成試料の慢性呼吸器影響には結晶質シリカなどの結晶構造も関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AMの1000~1400℃処理試料について、形状及び酸化鉄、結晶質シリカの結晶構造に注目してラット気管内投与後の生体影響の経時的観察を実施した結果、慢性影響は急性影響と異なり、焼成試料の新たな結晶構造とくに結晶質シリカが影響する可能性が示唆された。また平成23年度の研究成果に基づいてAM焼成試料の生体影響の量反応関係の検討も実施しており、平成24年度の計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に継続して、AMとその焼成処理品、酸化鉄、結晶質シリカについて、マクロファージ以外の上皮系の培養細胞での実験等を行い、被験物質により誘導される酸化ストレスや炎症作用についてバイオマーカー等を分析評価する。さらに、AM焼成処理品の生体影響における酸化鉄と結晶質シリカの複合物の影響の解明するため、同様な系で細胞実験や動物実験を行い、これまでの研究成果をもとに注目される酸化ストレスや炎症関連のバイオマーカーについて遺伝子発現の解析等も行う。3年間の研究成果を総合的に解析し、AMの安全な無害化処理品の要件に関する科学的根拠を蓄積し、アスベストの安全な無害化処理技術の開発における基礎資料として成果の公表し、研究目的の達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果からAM焼成処理品の生体影響に関して細胞実験と動物実験での差異が認められたため、平成24年度の細胞実験の検討項目を一部変更し、平成25年度も継続してAM焼成処理品の生体影響評価に適したバイオマーカーを検証するための細胞実験を行うこととした。そのため、酸化ストレス、炎症関連バイオマーカーの測定にかかる費用の一部を平成25年度に使用することとした。また、平成25年度の研究費は、AM焼成処理品の生体影響における酸化鉄と結晶質シリカの作用の解明のため、これまでに継続して細胞等を用いた実験および酸化ストレスや炎症関連バイオマーカー分析用試薬等の購入にかかる費用として使用する。さらに、これまでの研究成果の論文投稿費用としても使用する予定である。
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