アモサイト(AM)は1000℃以上での焼成処理により酸化鉄(ヘマタイト(HM)とマグネタイト(MT))、結晶質シリカ(クリストバライト(CB)とトリジマイト(TR))から成る複合体が生成され、その構成比率は焼成条件により異なる。本研究では、AMの焼成無害化処理品に含まれる鉄とシリカによる酸化ストレス、炎症作用を評価するため、細胞毒性試験とラット気管内投与試験を行った。 マクロファージ系及び肺胞上皮系培養細胞にAM、AMの1000~1400℃焼成試料、酸化鉄、結晶質シリカ試料を曝露し、細胞内活性酸素種及び培養上清中サイトカイン濃度等を測定した。AMの1000℃処理試料(AM1000)では細胞内活性酸素種生成量及び培養上清中TNF-α濃度が顕著に増加したが、AM1000を粉砕処理したAM1000Gでは毒性が軽減し、試料の繊維形状による細胞毒性への影響が確認された。なお、AM焼成試料の結晶構成成分であるCBでは細胞内活性酸素種の増加傾向が認められた。 一方、ラットに各試料を気管内投与後の呼吸器影響について、病理組織学的検索及び気管支肺胞洗浄液の炎症関連生化学指標等の測定を行った。AM焼成試料の慢性呼吸器影響に関して、1200℃、1400℃処理試料(AM1200、AM1400)でもAM1000と同様に肺の炎症反応が長期間持続した。AM1000Gでは肺の炎症反応は軽度で回復も早かったが、AM1200を粉砕処理したAM1200Gでは慢性炎症が認められ、繊維形状の粉砕による毒性の軽減効果は限定的であった。また、AM焼成試料の結晶構成成分のうち、CB、TRでは肺の炎症反応の進展傾向が認められた。AMの1200℃以上の焼成処理では酸化鉄に加えて結晶質シリカが生成されており、AM焼成試料の慢性呼吸器影響には結晶質シリカなどの結晶構造も関与していることが示唆された。
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