研究課題/領域番号 |
23590759
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
土屋 康雄 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (60334679)
|
研究分担者 |
山本 正治 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40018693)
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (50372470)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 胆嚢がん / 特異蛋白 / 国際情報交換 / チリ / プロテオミクス解析 / スクリーニング |
研究概要 |
平成23年度の計画は、チリで共同研究者と打合せを行った後、試料採取を行うことであった。 平成23年8月に、海外共同研究者が勤務するSotero del Rio病院(チリの首都サンチアゴ)を訪問し、研究打ち合わせを行った。その後、日本(新潟医療福祉大学)およびチリ(Sotero del Rio病院)で倫理委員会の承認を得てから試料の採取を開始した。 研究打ち合わせでは、本研究の目的、方法、及び予想される結果についての概要、患者への説明書及び同意書の書式と同意書の取得方法、試料(胆嚢組織、胆汁、血液、尿)の採取法および取扱い法と保存法、チリで採取した試料の日本への運搬方法、各試料からの蛋白質の分離、同定方法、得られた結果の解釈などについて協議し、合意が得られた。 試料採取の対象者は、チリ胆嚢がん患者であり、術前に本研究の目的、方法、予想される結果等を患者に説明し、書面によるインフォームドコンセントが得られたものから試料を採取した。平成24年3月末までに4名の患者から試料を採取した。 得られた試料は、胆嚢組織は、術後直ちに液体窒素による迅速固定標本を作成、その後-80℃のフリーザー中に保存した。胆汁は、胆摘後に採取し、市販チューブに移し、直ちに冷凍保存した。血液は、術前、術後の早朝空腹時に10 ml採取し、30分間室温放置後1500G、10分間遠心し、得られた上清(血清)をチューブに分注した。同様に、尿も術前、術後の早朝空腹時に20~30 ml採取した。得られた血清、尿は直ちに冷凍保存した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、5例の胆嚢がん患者から試料を採取する予定であったが、平成24年3月末までに4例の患者から試料を採取した。このうち1例はその後の精密検査の結果、胆嚢がんと診断されなかったため、この1例についてはコントロール(正常胆嚢組織)として使用する予定である。 23年度中には、目標とした5例の試料を採取できなかったため、引き続き試料の採取を平成24年6月末まで継続し、目標数に達する予定である。 当初予定したとおりに研究打ち合わせ、試料の採取などがほぼ達成できたので研究の進捗状況は概ね順調であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、Sotero del Rio病院を訪問し、採取した試料を受け取り、日本に持ち込み、試料中の特異蛋白質の検索を以下の手順で行う予定である。 組織試料中の蛋白質は、がん部と非がん部から分離採取する。レーザーマイクロダイセクション(LMD)法を利用して凍結組織切片上のがん細胞、非がん細胞を光学顕微鏡下で切り取り、採取する。なお、チリでは、早期の胆嚢がんを手術する例は少なく、ほとんどが進行がんであるため、採取した組織試料中からがん部と非がん部を分離することは困難であると考えられる。得られた試料が進行がん患者からのもので非がん部の細胞が採取困難な場合は、コントロールとして、胆嚢がん患者以外から採取した胆嚢組織を利用し、同様の方法で非がん細胞を採取する。 試料から得られた蛋白質は、超高感度の蛍光色素で標識した二次元電気泳動法などによって分離する。泳動後のゲルはレーザ-スキャナーにセットし、画像を取得する。画像解析は、同装置に附属の解析ソフトウェアを用いて行い、がん部に特異的な興味深い蛋白質スポットを探索する。 がん部に特異的と思われる蛋白質が検出されたら、胆汁、血清、尿中にその蛋白質が存在するか否かを検証する。各試料に存在する夾雑物をフィルターで除去後、イオン交換カラムで分画する。各々を超高感度の蛍光色素で標識し二次元電気泳動などによって出現する蛋白質を明らかにする。 がん部で検出され、さらに術前の血清や尿中にのみ検出された蛋白質をリストアップし、それぞれの蛋白質を同定するための準備に入る。 平成25年度には、選別された蛋白質スポットの同定を質量分析装置を用いて行う予定である。同定された蛋白質が、既知蛋白質か、新規蛋白質かを明らかにし、今後の胆嚢がん早期診断のためのキット試薬開発の可能性を探る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年7月に、チリ研究者が採取、保存していた試料を受け取り、日本に持ち込むための日本とチリ間の往復旅費、1名分を使用する予定である。 研究支援者雇用費として、特異蛋白質検索のための補助員の採用を予定している。試料の前処理や、特異蛋白質の分離のための電気泳動などの補助を行う検査技師1~2名、各々40日分を使用する予定である。 消耗品費として中心となるのは電気泳動で使用する試薬類である。蛍光試薬、DIGE用ゲル、DIGE用緩衝液セット、マルチプルアフィニティカラム、イオン交換クロマトカラム、マイクロピペット用のチップなどの購入を予定している。
|