研究課題/領域番号 |
23590759
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
土屋 康雄 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (60334679)
|
研究分担者 |
山本 正治 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40018693)
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
|
キーワード | 国際情報交換 / チリ / 胆嚢がん / 特異蛋白質 / プロテオミクス解析 / スクリーニング |
研究概要 |
平成24年度の計画は、チリで採取した胆嚢がん患者の試料中の特異蛋白質の検索を行うことであった。 平成23年度に入手したチリ胆嚢がん患者の病理ホルマリン固定パラフィン切片から分担研究者のグループが開発したOSDD (On-site Directed Digestion) 法を用いてペプチド試料を作製し、ショットガン分析により正常組織と癌組織に発現する蛋白質を網羅的に解析した。その方法と結果は以下の通りである。 胆嚢がん患者のホルマリン固定パラフィンブロックから専用メンブレン上にその切片を作製し、脱パラフィンを行った。PAS染色後、切片上の組織画像をもとに、正常細胞、癌細胞、進行癌細胞の3群に分け、Laser Micro Dissection 法により正常細胞群3試料、癌細胞群6試料、進行癌細胞群6試料を切り出した。得られた試料をトリプシン処理し、脱塩した。脱塩後のサンプルを遠心乾燥し、再度溶媒に溶解して濃度測定後、各サンプルを質量分析装置を用いて解析した。測定は1サンプルにつき3回行い、ショットガン分析を用いることでより分離能を上げた。得られた質量データの検索は、ウェブ上で検索可能な蛋白質同定システム”MASCOT”を用いて行った。得られた結果をExcel上で比較し、各群で選別された蛋白質の同定を行い、各群に固有の蛋白質を検出した。 その結果、正常細胞群からは平均993個の蛋白質が、癌細胞群からは平均1,291個の蛋白質が、進行癌細胞群からは平均1,105個の蛋白質が検出された。さらに、群間での比較を行い、正常細胞群に固有の蛋白質が306個、癌細胞群に固有の蛋白質が1148個、進行癌細胞群に固有の蛋白質が930個検出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度には、癌組織中から特異蛋白質を検出し、胆汁、血清、尿中から検出される蛋白質と比較照合し、オーバーラップする蛋白質をバイオマーカー候補として選抜することを目的としていた。 質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて、胆嚢がん患者の病理ホルマリン固定パラフィン切片上の正常細胞群、癌細胞群、進行癌細胞群からそれぞれに固有の蛋白質を多数検出することができた。しかし、癌細胞群や進行癌細胞群から特異的に検出された蛋白質が他の生体試料中からも検出されるかどうかの検討はできなかった。さらに、検出された蛋白質をバイオマーカー候補として絞り込むこともできなかった。今後、GO annotation解析や各群に特異的な蛋白質についてProtein ATRASの抗体リストを作成し、データベースに存在する既存抗体を用いた確認を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究の最終年度に当たることから、各々の細胞群から得られた蛋白質を詳細に検討し、以下の方法でバイオマーカーとなる蛋白質を同定する予定である。 蛋白質同定システム”MASCOT”を用いて各群で同定された蛋白質について、DAVID Bioinformatics Resources (ver. 6.7)によりGO annotation解析を行う。各群の蛋白質のIDリストをDAVIDのFunctional Annotation Toolを用いてgene IDリストに変換した後、Anno-tation Summary resultsを表示して、Gene Oncologyの結果をTXT形式で得る。MASCOTで得られた結果をもとに共同研究者の山本らが作成したプログラム gene SIN (ver. 9.0)を用いて、各群で同定された蛋白質の定性比較を行い、候補となる蛋白質を選抜する。さらに、gene SINで得られたgene nameとSIN scoreをもとに、プロテオーム定量解析ソフトウェアProgenesis (Nonlinear Dynamics社)を用いた解析を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、各細胞群から検出、同定された蛋白質についてProtein ATRASの抗体リストと比較し、バイオマーカーとなりうる蛋白質の選抜を行う予定である。選抜された蛋白質の確認を行うために既存抗体の購入を予定している。 研究支援者雇用費として、特異蛋白質同定、確認のための補助員の採用を予定している。試料解析のために検査技師1名を50日間程度雇用する予定である。 また、これまでの検討で得られた成果(胆嚢がん患者の組織中から検出された蛋白質の解析)について、平成25年11月に開催されるチリ消化器病学会において発表する予定であり、そのための費用を支出する予定である。
|