昆虫細胞発現系により作成した組換えウエストナイルウイルス(WNV)E蛋白質を用いて、以下の2点を行った。 1.中和抗体およびCTLを誘導する新奇ワクチンの基礎的研究 組換えWNVE蛋白質をcross-presentation惹起性アジュバントである両親媒性γポリグルタミン酸(γ-PGA)で内包したナノ粒子を作成し、B6マウスに皮下免疫(WNVE蛋白質にして80~100mgを1週ごと3回)を行い、最終免疫1週後に血清および脾細胞を採取して、抗体およびCTLの誘導について検討した。i)抗体誘導の確認 WNVE蛋白質もしくは不活化WNV粒子固相化プレートを用いたELISA法により、WNVE蛋白質内包γ-PGAナノ粒子の免疫による血清中へのWNV(E)結合性IgG抗体の誘導が確認された。ii)CTL誘導の確認 WNV感染により誘導される既知のCTLエピトープペプチドを用いてIFN-γ検出ELISPOTアッセイを行ったところ、CD8陽性CTLエピトープ5種類及びCD4陽性CTLエピトープ1種類のいずれのエピトープペプチドに対しても、WNVE蛋白質内包γ-PGAナノ粒子で免疫されたマウスの脾細胞中に、エピトープペプチド特異的なIFN-γ産生細胞の誘導が確認された。以上の結果は、WNVE蛋白質内包γ-PGAナノ粒子の免疫により、抗体およびCTLが誘導されることを示すものであり、今後は実際にWNV感染に対して防御効果を示すのか検討を進める。 2.WNV中和ヒトモノクローナル抗体の作成 WNVに近縁な日本脳炎ウイルスワクチン被接種者の末梢血単核球から、組換えWNVE蛋白質を用いたISAAC法により、3種類のWNV中和ヒトモノクローナル抗体を樹立した。WNV接種マウスに対し、これらの抗体投与は防御効果を示した。以上の結果は、これらの抗体の抗体医薬としての可能性を示すものである。
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