研究課題/領域番号 |
23590764
|
研究機関 | (財)労働科学研究所 |
研究代表者 |
薬師寺 史厚 (財)労働科学研究所, 研究部, 協力研究員 (20385909)
|
研究分担者 |
吉川 徹 (財)労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (50332218)
石堂 均 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (20560147)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | インスリン注射 / 非自己注射 / 介護者 / インスリンデバイス |
研究概要 |
平成23年度初めに国内で安全機材であるオートシールド針の使用が開始されたことを受け、これが手技に与える影響の調査を優先して行った。オートシールド針とペンニードル針を非自己注射に用いた場合の使用感の比較を21名の医師及び看護師による非自己注射について行い、針付、針を付けたデバイスの長さ、穿刺感、安定性、注入ボタン感触、抜針感、針外し、針刺し損傷の起こりにくさ、薬液注入満足感、総合評価について質問紙法により評価、比較した結果、安全性は高いが使用感に劣る結果を得たため24年度日本内科学会講演会で発表を予定している。また統計的検討としてエピネットにより針刺しを中心に医療機器使用の危険を統計的に分析した。 肉体的負荷状況の調査としては4種類の注射針(オートシールド、ペンニードル、ナノパス、マイクロファイン)と2種類のペン型注射器(フレックスペン、ソロスター)の組み合わせで万能試験機を用いて注射に必要な力を測定、比較した。注射に必要な力は針の違いよりも注射器本体による影響が大きく約2 N異なることが分かり、これらの結果については日本医療機器学会で発表を計画している。また実地にて手技の評価を行うための撮影機材および計測機材の導入を行った。 補助具の検討については3次元CADと光造形機等の高速試作法を活用して形状の検討を行った。次年度以降に模擬注射による実地試験を予定している。また従来針においても安全な針廃棄を行うことが今後より重要視されると考え、針廃棄に関する補助具の検討も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画全体としてはほぼ計画通り進展している。 変更点としてはインスリン注射で不可欠なデバイス用の針において、安全機材(オートシールド針)の使用が開始されたことがあって、デバイスでの手技、使い勝手、安全性の向上を主たる目的とする本研究にこれが与える影響も当初計画に加えて検討が必要となり、計画の変更を行った。安全器材を使用した際に生じるデバイスでの問題点の把握のため、23年度後期より安全器材のユーザビリティの検証を開始し、さらに従来針の使用でも安全な針廃棄を行うことがデバイスの検討においても重要な位置を示すと考えられるため、本研究の最終目的である臨床で使用可能な補助具の作成・改良に反映させるための評価を行った。なお、これらの検討結果は平成24年度早々に日本内科学会講演会で報告することとなっている。 そのため、当初計画していたモーションキャプチャによる肉体的負荷状況の評価は実施せず注入抵抗の測定等のデバイス側の調査(日本医療機器学会で報告予定)にとどめた。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度は前年度に引き続き補助具の検討として注入時の負荷軽減に加えて非自己注射時の穿刺安定性についてデバイスの針基まで延長されたカバーを用いることで改善の可能性を検証する。モーションキャプチャによる肉体的負荷状況の評価も視野に入れる。統計的検討については医療従事者におけるインスリン注射手技にかかわる安全性の検討から調査範囲を広げ、一般に在宅医療、訪問診療や問看護での安全性向上を目的とした調査を計画している。特に家族に対する調査は新たなる展開を生じると考えている。 25年度は補助具を製作して10 例程度の自己注射、非自己注射の評価による実証を行う。特に非自己注射に関しては患者家族等の参加による実際に想定される条件の模擬注射を計画する。当初計画に加えて針廃棄に関しても補助具を用いた場合の被験者実験を予定する。 エピネットから抽出されたインスリン注射での問題点と家族による非自己注射における問題点を比較して家庭内での既存安全機材の有効性についても考察を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度には上記報告で記載したように若干の計画変更をしたため、モーションキャプチャによる肉体的負荷状況の評価や実地調査など一部を実施しなかったため、基金化の恩恵により、これらに用いる予定であった模擬注射評価のための機材購入等(主として物品費)の予算執行を遅らせた。24年度以降に実施する調査、検討でこれら残金を使用する。 当初より24年度に割り当てた旅費等は学会発表、国内外調査に使用し、他の費用についてもできる限り計画に基づく執行を目指す。また、補助具の評価のための試作材料費等は計画通り執行する。
|