研究概要 |
高齢労働者は今後増加すると予想されるが、暑熱ストレスに対する抵抗力が若年者より低いとされるため、若年者と高齢者で同じ基準でいいのか検討が必要である。労働環境において熱中症の要因は暑熱環境だけではなく、高代謝作業も挙げられる。熱中症の対策には、作業時の代謝率を正しく見積もることが必要となる。作業現場で簡易的に代謝率を予測するには、心拍数から予測する方法が最も簡便で定量的な方法と考えられる。ISO8996では心拍数から代謝率を見積もる式が年齢、体重、性別に示されているが、環境温度を考慮に入れていない。高齢者7名と若年者7名の健康な被験者を対象に人工気象室内で湿度は40%一定で25,30,35℃の3種類の温度で、各1日ずつエルゴメータによる3段階の負荷を行った。実験は、残暑が厳しく暑熱順化している2012年9月~10月初旬に行った。最大酸素摂取量は心拍数と代謝率の線形性を仮定して推定した。推定最大酸素摂取量は、高齢労働者で気温による有意差はなかった。心拍数からISO8996を用いて予測した代謝率と実測の代謝率の平均値は、有意差がなかった。しかし、相対平均2乗偏差は20%ほどあり誤差はある程度認められた。心拍数と代謝率の個人特性を考慮する必要があることが示された。従って、心拍数ではなく安静時の心拍数からの差と年齢、体重を説明変数とし、目的変数を代謝率として重回帰分析で予測式を求めた。気温が有意な説明変数となり、高齢者においては予測代謝率の計算には気温の影響を考慮にいれる必要があることを示唆した。
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