研究概要 |
前年度行った暑熱に関する高齢者と若年者の暑熱環境下での被験者実験の結果を産業衛生学会と日本生気象学会に発表した。運動時の代謝率予測は、労働者の暑熱負担を軽減するため何らかの対応を取り始めるWBGT値を求めるのに重要である。気温25℃、30℃、35℃の3条件でエルゴメータ負荷時の高齢者と若年者の代謝量を測定した結果、代謝率予測式の説明変数として心拍数より安静心拍数との差である予備心拍数を用いた方が、予測誤差が少なかった。本研究では、高齢者と若年者の代謝率予測値を温度、体重、体脂肪、予備心拍数を説明変数として推定する式を求めた。それぞれの説明変数は有意であった。現在論文投稿中である。 以前行った熱中症に関する現場調査のデータを再解析した。調査した夏期建設業作業者の一日の作業前と作業後を比較したときの平均体重減少は体重比で1.3%、平均水分摂取は体重比3.6%であった。午後前半の作業時の体重1k当り、1時間ごとの水分喪失量が最も大きく、尿量は最も少なかった。平均尿比重及び平均心拍数も最も午後前半の作業が大きく、深部体温の指標としての尿温度も37.5℃を示し、最高であった。午後前半の作業での暑熱対策の必要性を示した。 その他、昨年度韓国で開かれた温熱に関するISO基準の会議に出席した。厚生労働省の熱中症基準で採用しているHot environments - Estimation of the heat stress on working man, based on the WBGT-index (wet bulb globe temperature)が現在改定中である。新しい版では基準が緩くなり作業者の深部体温が38℃を超える可能性があるため、深部体温38℃以下が担保されるような基準となるように意見を述べた。
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