アニサキス症の病態には、生きたアニサキス幼虫(以下アニサキスと略)の感染に伴うアレルギー反応が関与していると考えられている。一方、感作個体では、死滅アニサキスの摂取でも蕁麻疹などのアレルギー症状が引き起こされることが示唆されている。しかし、経口摂取された死滅アニサキスがアレルゲンとして機能するか否かについては不明であった。今回のラットを用いた研究により、以下の点を明らかにした。 (1)少なくとも1回の死滅アニサキス(加熱、凍結、切断、ホモジナイズ)の経口投与では特異抗体(IgG、IgM、IgE)は産生されない。(2)胃粘膜傷害がある場合は、アニサキスホモジネートを投与した場合でも特異IgE抗体が産生される。(3)感作個体はアニサキスホモジネートの摂取のみでも特異IgE抗体値は再上昇するが、特異IgG、IgM抗体の値は再上昇しない。(4)虫体の免疫組織学的検索から、特異IgE抗体値の再上昇に関与する幼虫抗原は、レネット細胞とクチクラ組織に存在する可能性がある。(5)感作個体にホモジネートを投与した後でも、アニサキス抗原は血中に検出される。 以上のことから、感作個体ではアニサキスホモジネートを摂取した場合に再感作される可能性があり、さらに、その抗原が血中へ移行することから、蕁麻疹などのアレルギー症状が引き起こされる可能性のあることを示した。
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