研究概要 |
ここ数十年の間の喘息・アレルギーの有病率の劇的な増加の背景には、室内外の空気質中の化学物質濃度増加の影響があると疑われている。本研究は、妊婦の妊娠中期と後期に得た血液中の難分解性有機塩素系農薬29物質の濃度を測定し、汚染の経年変化と17~47歳の186人の妊婦属性との関連を明らかにした。今後、難分解性有機塩素系農薬濃度と喘息、アレルギー疾患、感染症罹患との関連性を検討するための基礎的解析結果を得た。 29物質のうち21物質を検出したが、21物質のうち日本での使用実績のないMirex、Parlar-26、Parlar-50 が高頻度に検出された。検出された物質の濃度はそれぞれ高い相関性を示した。2002年から2005年にかけてp,p'-DDD, o,p'-DDE, p,p'-DDE, Parlar-26, Parlar-50の濃度が劇的に減少した(p < 0.05)。難分解性有機塩素系農薬濃度と妊婦属性との関連性は次の通りだった。過去の受胎回数が多い程、難分解性有機塩素系農薬濃度が低かった。難分解性有機塩素系農薬濃度と過去の受胎回数との関連性は、出産歴との関連性より強かった。年齢が高い程、p,p'-DDE, chlordanes 類, cis-heptachlorepoxide, β-HCH, mirexの濃度増加を認めた。妊娠前体重が多い程、dieldrin, HCB, β-HCH, Parlar-26, Parlar-50と正の相関を示した。体重との関連性はBMIとの関連性より強固であった。 本研究によって新たに得た科学的知見は、(i)使用実績のない農薬が妊婦血液から検出されたこと、(ii)2002年から2005年にかけての妊婦血液中の難分解性有機塩素系農薬濃度の有意に減少したこと、(iii)過去の妊娠回数が多い程、難分解性有機塩素系農薬濃度が低いことであった。
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