研究課題
東南アジア・南アジア諸国における不明熱患者(FUO)の血清でハンタウイルス、レプトスピラ、チクングニア熱、デング熱に対する血清抗体の測定および病原体遺伝子検出を行う。ハンタウイルス抗体検出システム(5種の組換え抗原)と遺伝子検出システムを準備しスクリーニング体制を整え、評価も終了している。レプトスピラ症抗体検出システム(2種の組換え抗原)と遺伝子検出システムも準備しスクリーニング体制を整えている。今年度はラットの実験感染を行い、診断システムの評価を行った。デング熱抗体検出キットは日本国内では需要が少なく入手困難であるため、ベトナム国立感染症研究所であるパスツール研究所より分与された。レジオネラ菌は菌体抽出抗原を用いたELISAシステムの構築を行った。ペスト菌のF1抗原は神戸検疫所より分与を受けた。チクングニア抗原については未だ準備ができていない。 これらの抗原および抗体検出キットを用いて、2003 - 2009年の不明熱およびレプトスピラ症疑い患者血清(タイ・インドネシア・スリランカ)のスクリーニングを進めている。その結果以下のことが明らかとなった。タイのレプトスピラ症疑いの患者の中にはレプトスピラ抗体反応が強く診断漏れと考えられる患者がおよそ1/3みつかった。現地でのレプトスピラ診断に改善が必要なのかもしれない。同じ血清群の中ではレジオネラ強陽性を示す患者がおよそ1/4であった。熱帯地方でのレジオネラ症の重要性は認識されつつあるが、予想以上に広い範囲で疾病の原因となっている可能性がある。 これらを通じて不明熱に占める上記疾患の割合を明らかにし、さらに、これらの疾患を取り除いた後に残った「真の不明熱」血清の絞り込みを行うための準備ができた。
2: おおむね順調に進展している
今年度はデング熱抗原の入手が遅れたこと、チクングニア熱の抗原の入手にも手間取っていることが、反省する点である。このことから目標とするスクリーニングを終了することができなかった。しかしながらその他の抗原では解析も進めることができた。準備は十分であるため、今後の急速な展開が見込めるため、ぜんたいとしてはおおむね順調に進展していると考えられる。
デング熱のスクリーニングを進める。チクングニア抗原の入手を試みる。これらのスクリーニング結果を併せてた変量的に解析を行い、真の不明熱の割合を明らかにする。真の不明熱血清を用いてプロカルシトニンの測定を行い、細菌性疾患であるのかどうか推測する。そこから原因病原体の特定に向けて展開してゆく。その方法はおおむね当初の計画に則って進めてゆく。
チクングニア抗原の入手および標準陽性血清の準備のため、動物実験を行う。レプトスピラ症の抗体応答についてもより有効な抗原タンパクの探索を進める。このため、実験動物関連、遺伝子工学、生化学、免疫学的試薬(抗体測定)や器具の購入が必要となる。23年度はチクングニア抗原の入手に手間取り、関連の予算執行がされなかったため、未使用額が生じた。24年度に速やかに実施する予定である。
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