研究課題
ハンタウイルスは、げっ歯類を自然宿主とする人獣共通感染症の原因ウイルスである。申請者はこれまでに東南アジア・南アジア諸国でのハンタウイルス関連疾患に関する研究を行ってきた。その結果、不明熱とされた中の一部にハンタウイルス感染症を見いだしてきた。が、依然として多くの検体は不明熱のままであった。これは地球規模での公衆衛生上の大きな問題点であると考えられる。本研究では東南アジア・南アジア地区での不明熱の診断体制を整え、さらに新規病原体の特定を試みることを目的とする。近年はアジア地区でのデング熱の大流行、チクングニア熱のアウトブレーク、水害にともなうレプトスピラ症のアウトブレークも報告された。さらに中国および米国から報告された新規のブニヤウイルス感染症である、血小板減少を特徴とする熱性疾患の原因ウイルスであるSFTSVが日本国内の症例が次々と発見・確認されたことから、ますます診断体制の充実が必要となっている。標準的な診断法が存在するのはデング熱のみである。今年度は不明熱に含まれる考えられるハンタウイルス、レプトスピラ、チクングニア熱およびSFTSVについての診断について準備を進めた。ハンタウイルスおよびレプトスピラ症については組換え抗原の作製およびイムノクロマトグラフィーによる検査の簡便化をすすめることができた。チクングニアについてはまず不活化抗原を使用したいと考え、外部機関に抗原作製を依頼していたが、不具合により滞っており、組換え抗原への転換をはかることにし現在準備を進めている。SFTSVについてはウイルスを分与され、3種病原体使用の手続きも終了したため、間接蛍光抗体法用の抗原を作製し、不明熱症例の診断をまず日本国内の不明熱症例から進めている。次年度はチクングニア抗原をそろえ、いよいよ真の不明熱症例の解析を開始する予定である。
2: おおむね順調に進展している
チクングニア抗原の作製に手間取っているが、その他感染症、ハンタウイルス、レプトスピラ症、E型肝炎、デングウイルスIgM 検出については順調であり、SFTSV抗原も作製することができた。これらのマイナー感染症の診断でも診断がつかない検体の収集はチクングニアを除いてはおおむね順調に進展している。本来ならここから病原体の特定についての網羅的解析を開始する予定であったが、これについては25年度に実施する事が可能と考える。そのため、(2)のおおむね順調に進展している、に該当すると考えられる。
チクングニア抗原の入手について、組換え抗原も視野に入れて準備を進める。それと同時にチクングニアをスクリーニング項目から一時的に外して解析を進める。すなわち、当初の計画通りに、サンプルからの直接の遺伝子情報の取得の試み;血清のDNA分画からランダム増幅しハイスループットシーケンサによる配列決定、細菌およびDNAウイルスをターゲットとする解析、および血清のRNA分画からRDV法による遺伝子配列の取得、RNAウイルスをターゲットとする解析を行う。さらに、ウイルス分離による古典的方法による解析も進める。新鮮材料を入手し、病原体分離を試み、血清をVero細胞へ接種する。
昨年度は国立感染症研究所に依頼していた不活化チクングニア抗原の作製が難航しており、確保していた予算が未使用金額として発生した。この点については当面はスクリーニング項目から外し計画を進める。次年度は、不明熱症例材料の解析を目的として、血清学的解析、分子生物学的実験(組換え抗原の作製および病原体の解析)および病原体分離を目的とした細胞生物学的実験を行う。このためこれらの目的のため、主に消耗品を中心として研究費を使用する。また、最終年度であるため、結果を報告するために、英文校正、学会発表、論文投稿のために研究費を使用する計画である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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