研究課題
アセット・モデルは地域のニーズや改善を要するところではなく、地域に既にある資源や良いところに注目して、公衆衛生活動を展開しようとする手法である。この研究の目的は、(1) アセット・モデルの概念や論点を整理して我が国の状況にあったアセット・モデルのあり方を明らかにすること、(2) 全国の市町村及びモデル地域におけるアセット・モデル的な施策の現状を明らかにすること、そして、(3) アセット・モデルによる公衆衛生施策の効果を検証することである。まず、アセット・モデルに関する海外及び国内の文献、活用市町村についての情報収集と検討を行った。また、全国の市町村を対象とした保健活動等の実施状況調査データを用いて、アセットの活用状況に着目した解析を行った。次に、全国の市町村について、介護保険事業状況報告データから年齢調整した要介護者割合を算定し、アセットの活用状況との関連を分析した。アセットの活用として、企画立案において人と人のネットワークの強さを考慮している市町村での要介護者割合は、考慮していない市町村での要介護割合よりも有意に低かった。モデル自治体において、アセット・モデルを用いた健康増進計画の策定を試みた。具体的には、地域の種々の組織の関係者や住民等の参加によって、地域のアセットを探して言語化を行うグループワークを行い、その結果得られたアセットの紹介を行うとともに、その活用の検討を行い、健康増進計画への反映を試みた。地域在住高齢者に自記式郵送調査を行い、過去1年間の転倒経験等を調査した。プールや屋内運動施設等の地域資源を活用した健康づくりを実施している市町村の高齢者は、実施していない市町村の高齢者よりも有意に転倒リスクが低い結果が得られた。
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